「うるさいって言ってるだろ!」深夜1時のアパートで響いた声。一年後、隣の部屋から荷物が運び出された
網戸が開く音で、目が覚めた
新卒で借りたアパートは二階にあり、壁も床もあまり厚くありませんでした。廊下を誰かが歩けば足音が聞こえ、隣の部屋のテレビの音がかすかに届くこともあります。
入居した日に挨拶をした隣人は、ごく普通の人でした。
「今日から隣に住みます。よろしくお願いします」
「こちらこそ。何かあったら言ってください」
それから半年ほど、特に気になることはありませんでした。
ところが夏のある晩、網戸が勢いよく開く音で目が覚めました。
時計を見ると、午前1時を回ったところでした。
直後、隣のベランダから大きな声が聞こえてきました。誰かに何かを訴えているようでしたが、何を言っているのかまでは聞き取れません。
窓を閉めても声は響いてきます。私は布団の上で体を起こしたまま、静かになるのを待っていました。
少し離れた部屋から、声が返ってきた
しばらくすると、少し離れた部屋の窓が勢いよく開く音がしました。
「うるさい」
少し間を置いて、また声がします。
「うるさいって言ってるだろ!」
それでも隣の声が続くと、三度目に「何時だと思ってるんだ」と聞こえてきました。
上の階からもサッシを動かす音がして、ほかにも目を覚ました人がいるのだと分かりました。
やがて隣の声は止まり、網戸が閉まる音がしました。それでも私はなかなか眠れず、明るくなるまで何度も時計を見ました。
翌朝、階段の近くで管理人に会いました。
「昨夜、何かあったの?」
「隣の部屋から、夜中にかなり大きな声が聞こえていて…」
管理人は少し考えてから、「分かった。部屋を特定しない形で注意の紙を出しておくよ」と答えました。
数日後、集合ポストのそばに「夜間の生活音にはご配慮ください」と書かれた紙が貼られていました。
それで完全になくなったわけではありません。忘れたころになると、深夜にまた声が聞こえることがありました。
一年後、隣の部屋から荷物が運び出された
不思議だったのは、昼間に顔を合わせる隣人には変わった様子がなかったことです。階段ですれ違えば会釈をしますし、一度、私が大きな荷物を持っていたときにはドアを押さえてくれたこともありました。
だからこそ、深夜に聞こえてくる声と同じ人だということが、私にはうまく結びつきませんでした。
理由を尋ねるほど親しいわけでもなく、私は管理人に相談する以上のことはしませんでした。
それから一年ほどたった初夏の休日、廊下を通ると、隣の部屋から段ボールや家具が運び出されていました。作業員が開けたドアの向こうには、ほとんど物がなくなった室内が見えました。
その日を境に、深夜に網戸が開く音も、大きな声も聞こえなくなりました。
数日後、ベランダで洗濯物を取り込んでいると、下の階の人がこちらを見上げました。
「最近、静かになったね」
「そうですね」
結局、あの声が何だったのかは分かりません。
静かになった夜、窓の外から聞こえてきたのは、遠くを走る車の音だけでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














