「今日だけでも、だめですか?」ホテルの会計で特別対応を求める客。だが、責任者が正論で対応した結果
あと3個で貯まるカード
ホテルのバイキングで食事を終え、会計の列に並んでいたときのことです。私の前には4人連れの客がいました。
順番が来ると、そのうちの一人が財布からスタンプカードを取り出します。押印欄はほとんど埋まっていて、残りはあと3個でした。
「これ、今日の分が付いたらいっぱいになりますよね?」
店員がカードを確認すると、客は少し身を乗り出しました。
「じゃあ、3人分を先に会計して、その3個が付いたら……最後の1人に割引を使うって、できませんか?」
店員は一瞬考えるようにカードへ目を落とし、それから申し訳なさそうに答えました。
「ああ……お気持ちは分かるんですが、このカード、貯まったそのお会計には使えないんです。割引は次のお会計からでして」
すると客は、少し残念そうな顔をしました。
「えっ、でも今日で貯まるんですよね?」
「はい。スタンプは貯まるんですが、割引を使えるのはその次からなんです」
「そうなんですか……。でも、もうここに来る予定がないかもしれなくて。せっかく貯まるのに、そのまま帰るのはちょっともったいないなって」
怒鳴ったり、店員を責めたりするような口調ではありません。ただ、どうにかならないかという気持ちが伝わってきました。
「今日だけでも、だめですか?」
店員も困った表情を浮かべながら、もう一度説明します。
「そうですよね。ただ、こちらは皆さま同じご案内になっていまして……。今日は通常のお会計でお願いすることになります」
「今日だけでも、だめですか?」
「申し訳ありません。そこは私の判断では変えられないんです」
客はカードを見つめたまま、「うーん……」と小さく声を漏らしました。
やり取りが続くうちに、会計の列も少しずつ長くなっていました。私の後ろにも何人か並んでいます。
客もその様子には気づいたようでしたが、まだ納得しきれない様子です。
「じゃあ、一回会計を終わらせて、すぐもう一回っていうのもだめなんですよね?」
店員が答えようとしたところで、カウンターの奥から責任者らしい人が出てきました。やり取りが長くなっていることに気づいたようです。
「お待たせして申し訳ありません。私からもご説明しますね」
責任者はカードを確認し、穏やかに続けました。
「こちらの割引は、スタンプがすべて貯まったあとの次回のお会計から使えるものなんです。ですので、今日のお支払いに充てることはできないんです」
客は少し間を置いてから、「そういう決まりなら仕方ないですね」とやっと息をつきました。
ようやく動き出した列
結局、4人分を通常どおり会計し、客はカードを財布へ戻しました。
「せっかく貯まるのになあ」
連れにそう漏らしながら、4人はレジを離れていきました。
止まっていた列が、ようやく動き始めます。
私の番になると、店員は少し疲れたような表情を見せながらも、「大変お待たせしました」と頭を下げました。
客の「使えるなら今日使いたい」という気持ちも、分からなくはありません。一方で、店員も自分の判断で決まりを変えられるわけではありません。
どちらかが大声を出したわけでもないのに、少しずつ空気が張りつめていく。そんな場面だったからこそ、最後まで感情的にならず説明を続けていた店員の姿が印象に残りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














