「その業者はやめろ、うちで決めるから」家を建てる話まで決められていた私たち。だが、初めて断った瞬間
家の話まで決められていた
夫と私が家を建てようと決めたとき、すでに何度も打ち合わせを重ねている建築会社がありました。間取りや予算の相談も進み、ようやく形が見え始めていたころです。
その話を父方の親族の集まりで口にすると、父方の実家を継いでいる親戚が、ふいに箸を置きました。
その人は昔から、親族の集まりの段取りや贈り物の取りまとめを仕切ることが多く、誰もあまり逆らいませんでした。
「その業者はやめろ、うちで決めるから」
突然そう言われ、私は言葉を失いました。夫が「もうかなり話が進んでいて」と返しかけると、その人は「誰の顔を立てると思ってるんだ」と言い切りました。
場の空気はすぐに重くなり、まわりの親族も口をはさみませんでした。
そのころの私たちは、親族ともめることを必要以上に怖がっていたのだと思います。
結局、進めていた会社には私たちから断りを入れ、その人が勧める会社と契約しました。
家が完成した日、夫が玄関を見ながらぽつりと言った言葉を、今でも覚えています。
「この家、俺たちが選んだって言えるのかな」
私も同じ気持ちでした。自分たちの暮らす家なのに、一番大事なところを自分たちで決めきれなかったことが、ずっと引っかかっていました。
初めて断った食卓
その親戚は毎年、自分の妻の実家で作っている農作物の注文も親族にまとめて取っていました。
集まりの席で「今年はどれだけにするか」と話を進め、その場で代金を先に払うのが、いつの間にか当たり前になっていたのです。
私は毎年、必要かどうかを考える前に流れで申し込んでいました。でも、家のことがあってからは、このままではいけないと思うようになっていました。
その年の食卓でも、案の定その話が出ました。
「今年の分も、まとめて先に払え」
私は箸を置き、顔を上げました。
「今年はやめておきます」
しんと静まり返りましたが、私は言い訳を足しませんでした。
少しして、別の親族が「うちも、今年は必要なら自分で頼みます」と静かに続きました。その場で誰かが言い争ったわけではありません。ただ、それまで当然のように従っていた流れが止まったのです。
その人は不機嫌そうな顔をしましたが、それ以上は何も言いませんでした。帰り道、夫が「今度はちゃんと言えたな」と言い、私はやっと胸のつかえが下りた気がしました。
その後、親戚の集まりで何もかもが変わったわけではありません。それでも、以前のようにその場で一方的に話を決められることは減りました。あのとき短く断ったことが、私たちが自分たちのことを自分たちで決め直す、最初の一歩だったのだと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














