tend Editorial Team

2026.08.24(Mon)

「やだ、やだ!」大切な物をなくして泣き止まない子供。だが、スタッフの対応に救われた瞬間

「やだ、やだ!」大切な物をなくして泣き止まない子供。だが、スタッフの対応に救われた瞬間

あきらめかけていた家族

友人との温泉旅行で、宿に着いたときのことだ。

チェックインの列に並んでいると、前のほうから小さな子どもの泣き声が聞こえてきた。

フロントの前では、両親が困った顔で子どもをなだめている。

「ここに来るまでの道で、落としちゃったみたいで」

母親がスタッフに説明していた。

子どもがずっと抱えていたぬいぐるみが、宿で荷物を下ろしたときにはなくなっていたという。

バスの中で落としたのか、停留所から宿まで歩く途中だったのかは分からない。移動中は荷物も多く、両親も気づかなかったようだった。

スタッフは、家族がどの停留所で降り、どの道を歩いてきたのかを確認していた。

「もう戻っても、たぶん見つからないよ」

父親が子どもにそう言い聞かせる。責めるような口調ではなく、疲れた声だった。

外は暗くなり始めていた。着いたばかりで荷物もある。探しに戻ったところで見つかる保証もない。あきらめてもらうしかないという気持ちも分かる気がした。

「やだ、やだ!」

それでも子どもは首を振り、母親に抱かれながら泣き続けていた。

スタッフが口にした一言

家族の手続きが終わり、チェックインの列も途切れたころだった。

先ほど話を聞いていたスタッフが、もう一度家族のところへやってきた。

「バス通りまで戻って、探してきますね」

特別に力の入った言い方ではなかった。まるで当たり前のことのようにそう告げると、上着を羽織って玄関へ向かった。

「じゃあ、私も行きます」

父親もすぐに立ち上がり、スタッフと一緒に外へ出ていった。母親と子どもはロビーに残り、帰りを待つことになった。

「あんなふうに動いてくれるんだね」

友人が小さな声で言った。私も驚いていた。ただ、暗くなりかけた道で、本当に見つかるのだろうかとも思った。

私たちがチェックインを済ませ、鍵を受け取って階段へ向かおうとしたときだった。

玄関のドアが開き、父親とスタッフが戻ってきた。

「あったよ!」

父親の手には、探していたぬいぐるみがあった。

それを見た子どもは母親の腕から降り、駆け寄ってぬいぐるみを抱きしめた。さっきまで泣いていたのが嘘のような笑顔だった。

両親が何度も頭を下げると、スタッフは少し照れたように笑い、またフロントへ戻っていった。

旅先では、なくした物ひとつでも心細さが大きくなる。あのとき迷わず動いてくれたスタッフの姿を、私は今でも覚えている。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.10.14(Wed)

「下手くその車は奥へ移せ!」運転歴40年を自慢し、駐車場で私を怒鳴る隣の理事。だが、管理人の前で白旗
tend Editorial Team

NEW 2026.10.14(Wed)

「すぐ代わるわよ」水族館で娘の順番を奪った女性。ヒトデに夢中だった彼女に、係員が告げた一言
tend Editorial Team

NEW 2026.10.14(Wed)

「こんなに頼んだ覚えはないぞ!」回転寿司で注文を手伝った私に怒鳴る男性客。注文履歴を見せると態度が一変
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.05.06(Wed)

座るだけで時給発生の待機枠は天国か地獄か。パン工場バイトの幽体離脱するほどの没入感と過酷な現実の境界線
tend Editorial Team

2025.08.15(Fri)

HIKAKIN&SEIKIN、10年の想いが詰まった新曲に『原点にして頂点』の声。YouTubeテーマソング2が感動的す...
tend Editorial Team

2026.09.14(Mon)

「荷物を1つお持ちします」混雑した電車で動けなくなった母親に、隣の人が差し出した手
tend Editorial Team