「今日は座って帰れる」仕事帰りの電車。だが、隣の乗客の態度に思わず車両を移ったワケ
やっと座れた、と思ったのに
その日は仕事が長引き、いつも以上に疲れていました。
帰りの電車も混んでいましたが、乗り込んだ車両を見ると、ひとつだけ席が空いています。普段は立ったまま帰ることが多かったので、迷わずそこへ座りました。
「今日は座って帰れる」
そう思って息をついた直後、隣に座っていた人が鞄の中を探り始めました。
しばらくして出てきたのは、缶飲料とつまみの袋でした。缶を開け、袋を広げ、そのまま飲み始めます。
電車の中で飲食すること自体は珍しくありません。最初は私も、それほど気にしていませんでした。
ところが、すぐ隣から聞こえてくる咀嚼音が思った以上に大きかったのです。
くちゃくちゃという音のあとに、袋を探る音。少しすると、また同じ音が聞こえてきます。
私はなるべく気にしないよう、窓の外を見ることにしました。
本を開いても、内容が入ってこない
それでも音はなかなか止まりませんでした。
気をそらそうと鞄から本を取り出しましたが、文字を追っていても、隣から音が聞こえるたびに意識がそちらへ向いてしまいます。
同じ行を何度も読み直しているうちに、本を開いている意味もなくなってきました。
ふと向かいを見ると、一度こちらへ目を向けてから、すぐに視線を戻した人がいました。近くに立っていた人も、少し位置をずらしています。
私だけが気にしすぎているのかと思っていましたが、少なくとも音が聞こえている人はほかにもいるようでした。
とはいえ、隣の人へ注意する勇気はありません。
せっかく座れたのだから我慢しようと思う一方で、仕事で疲れた頭には、その小さな音の繰り返しがだんだんつらく感じられました。
次の駅で、席を立った
次の駅に着き、扉が開いたところで、私は本を閉じました。
「もう無理だ」
そう思い、何も言わずに席を立ち、そのまま隣の車両へ移りました。
移った先には空席がありません。結局、私はつり革につかまって立つことになりました。
それでも不思議なことに、座っていたときより気持ちは楽でした。
座れるかどうかより、落ち着いて帰れることのほうが、その日の私には大事だったのだと思います。
せっかく見つけた席を自分から離れるのは少し悔しかったものの、相手を変えられないなら、自分が場所を変えるしかないこともあります。
今でも仕事帰りの電車で空席を見つけると、あの夜のことをときどき思い出します。座れることが、必ずしも一番休める選択とは限らないのだと知った出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














