「連絡先、知ってるのに」休みの日に職場まで来た同期、笑顔なのになぜか消えなかった違和感
連絡先を交換したきりの同期
三十代のころ、私は派遣でシフト制の職場に勤めていました。
ほぼ同じ時期に入ったのは、私ともう1人の女性だけです。
研修は一緒に受けましたが、配属後は勤務する曜日が違い、昼休みも交代制。
同じ日に出勤していても、ほとんど顔を合わせないことがありました。
研修の帰りに連絡先を交換したものの、それきりです。
私から送ることもなければ、同期から連絡が来ることもありませんでした。
ある冬の平日、私は午後6時ちょうどに仕事を終えました。
上着を着てビルの入口を出たところで、突然名前を呼ばれます。
「あ、出てきた。お疲れさま」
振り向くと、入口の脇に同期が立っていました。
その日は休みのはずで、シフト表にも名前はありません。
「え、どうしたの?この辺に用事?」
私が聞くと、同期は首を横に振りました。
「ううん。シフト見たら、今日は6時までだなって思って」
「じゃあ…待ってたの?」
「うん。同期って私たちだけだし、ちょっと話せたらいいなと思って」
同期はいつものように笑っていました。
嫌なことを言われたわけでも、何かを頼まれたわけでもありません。
それでも私は、どう返したらいいのか少し迷ってしまいました。
悪いことではないのに、なぜか残った戸惑い
入口の前で少し話すと、同期は「じゃあ、また職場でね」と手を振り、駅のほうへ歩いていきました。
帰り道、私はスマートフォンの連絡先を開きました。
そこには、ずっと使っていなかった同期の名前があります。
「連絡先、知ってるのに。どうして何も言わずに待ってたんだろう」
事前にひと言連絡をくれれば、私も戸惑わずに済んだ気がします。
同期に悪気があったようには見えませんでしたが、休みの日にわざわざ来て、終業時間に合わせて待っていたことが、どうしても心に残りました。
翌日、休憩室で一緒になった先輩に、そのことを話してみました。
「休みの日に来たの?仲良くなりたかったのかもね」
「たぶん、そうなんだと思います」
そう答えながらも、自分の中の戸惑いは完全には消えませんでした。
その後、同期が入口で待っていたことはありません。連絡も来ず、困るようなことをされたわけでもありません。
ただ私は、それからしばらく、仕事が終わってもすぐには外へ出ず、ロッカーの前で少し時間を置くようになりました。
同期は今も、廊下で私を見つけると遠くから笑顔で手を振ってきます。
「お疲れさま。今日は遅番じゃないんだね」
「お疲れさま」
私も手を振り返します。
きっと、ただ仲良くなりたかっただけなのかもしれません。それでも夕方、ビルの入口を出るときには、今でもふと、あの日同期が立っていた場所へ目を向けてしまいます。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














