「家では、ほとんどしないけどね」親戚の前で育児を語る夫。だが、妻が隣で小さくこぼした本音とは
親戚の集まりで見た、年上のいとこの姿
お盆に親戚が集まったときのことです。
叔父の家の座敷には二つの座卓が並べられ、十人ほどの親戚が昼食を囲んでいました。私は年上のいとこの奥さんの隣に座り、座卓を挟んだ向かい側には、いとこと三歳になる息子さんが座っていました。
いとこは昔から人当たりがよく、親戚の集まりでも率先して話題を振るような人です。結婚して子どもが生まれてからは会う機会が減っていましたが、その日も変わらず明るく、息子さんにもやさしく声をかけていました。
食事が始まってしばらくすると、息子さんが箸を置き、いとこの袖を引っ張りました。
「パパ、これ取って」
いとこは自分の食事をいったん止め、息子さんが指さした煮物を小さく分けて、子ども用の皿へ移しました。
「熱くないか確認してから食べような」
そう言いながら世話をする様子は手慣れているように見えました。息子さんがこぼしたものもすぐに布巾で拭き、食べ終わるまで何度か声をかけていました。
その様子を見ていた伯母が、感心したように言いました。
「ずいぶん面倒を見ているのね。家でもいつもこんな感じなの?」
夫の返事の直後、妻がこぼした言葉
いとこは息子さんの皿を整えながら、明るい調子で答えました。
「できるときはやってるよ。食事の世話くらいはね」
伯母は「今どきのお父さんは偉いわね」と笑い、ほかの親戚も微笑ましそうに二人を見ていました。
私も、仕事が忙しくてもきちんと子育てに関わっているのだろうと思っていました。
ところが、その直後です。
隣に座っていた奥さんが、手元の小皿に視線を落としたまま、小さな声でつぶやきました。
「家では、ほとんどしないけどね」
座卓の向かい側では別の親戚が話し始めていたため、その声に気づいた様子はありませんでした。すぐ隣にいた私にだけ、かろうじて聞こえたのだと思います。
奥さんはそれ以上何も言わず、息子さんの空いた器を自分の近くへ引き寄せました。その表情は怒っているというより、少し疲れているように見えました。
一方のいとこは、親戚との会話に戻り、普段どおり笑っています。その後も息子さんが飲み物を欲しがると対応していたので、その場で何もしていなかったわけではありません。
ただ、親戚の前で見せている姿と、家庭での実際の様子には、奥さんにしか分からない違いがあるのでしょう。
夫婦の事情を知らない私が、どちらか一方の言葉だけで判断することはできません。それでも、隣で聞いた短いひと言が気になり、その後は楽しそうに話すいとこの姿を、少し複雑な気持ちで見ていました。
外で見える家族の姿だけでは、普段の生活までは分からないのだと感じた出来事です。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














