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2026.09.24(Thu)

「ポストにお願いします」市営住宅のお知らせを紙で受け取りたい住人。役員になった私がどうしても直接伝えたかった理由

「ポストにお願いします」市営住宅のお知らせを紙で受け取りたい住人。役員になった私がどうしても直接伝えたかった理由

今回も、ドアは開かなかった

婦人部の役員になって半年ほどたったころ、ごみ当番の表が新しくなり、私は紙の束を抱えて市営住宅の同じ階段を使う家を回っていました。

これまでは顔を合わせて渡すことが多かったのですが、端の家の住人には、以前にも「連絡はポストに入れてください」と言われたことがあります。

今回も呼び鈴を押すと、ドアの向こうから声がしました。

「また役員さんですか?前にも言いましたよね」

「すみません。当番表が新しくなったので、お持ちしました」

「そういう連絡は、ポストに入れてもらえれば大丈夫です」

「わかりました。来月、防災訓練もあるんですが…」

「それも紙でお願いします」

「わかりました」

私はそれ以上話を続けず、当番表をポストに入れて次の家へ向かいました。

普段のお知らせなら、言われたとおりポストに入れればいい。私もそう思っていました。

ただ、防災訓練のことだけは少し引っかかりました。もしものときに関わることです。

紙を入れて終わりにするより、今回は一度きちんと伝えておきたい。役員になったばかりの私は、そんなふうに考えていました。

会長さんが言った「今回だけ」

その夜、私は自治会の会長さんの家を訪ねました。70代の会長さんは、私の話を最後まで聞いてくれました。

「二度とも、ポストに入れてほしいと言われたんですね」

「はい。普段の連絡なら、それでいいと思うんです。でも今回は防災訓練なので、一度ちゃんと伝えたほうがいいのかなと思って」

会長さんは少し考えてから、うなずきました。

「そうですね。では今回は、私も一緒に行きましょう」

それから、少し笑って付け加えました。

「ただ、次から普段のお知らせは、希望どおりポストでいいと思いますよ」

その言葉を聞いて、私も少し肩の力が抜けました。

翌日、会長さんは防災訓練のお知らせを一枚持ち、私と一緒に端の家を訪ねました。

呼び鈴を押すと、少ししてドアが開きました。住人は私の顔を見たあと、隣に立つ会長さんへ視線を移しました。

「こんにちは。自治会の者です。今日は防災訓練のお知らせだけお持ちしました」

会長さんが紙を差し出すと、住人は受け取りました。

「普段の連絡は、これまでどおりポストで大丈夫です。今回は防災のことなので、念のため直接お伝えしました」

「……そうですか。わかりました」

住人は紙に目を落としました。

会長さんはそれ以上話を続けず、「では、失礼します」と頭を下げました。私も会釈し、その場を離れました。

その後は、私もその家に無理に声をかけることはせず、通常のお知らせは希望どおりポストに入れるようにしました。

そして防災訓練の日。集会所に集まった人たちの中には、あの住人の姿もありました。

顔を合わせると、住人は軽く会釈しました。

「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

それだけのやり取りでした。

今思えば、何でも直接伝えなければいけないわけではありません。

それでも、防災に関わることだからこそ、今回はきちんと伝えておきたいと思った。その気持ちを会長さんが受け止めつつ、次からの距離の取り方まで示してくれたことが、私にはありがたく感じられました。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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