「あれ、起きてるんじゃないか」混雑した電車で寝転ぶ男性。だが、女性が何度も声をかけた結果
長い座席を使って寝転ぶ男性
休日の午後、普通電車に乗ったときのことです。
車内はそこそこ混んでいて、空いている席はほとんどありませんでした。
私はドアの近くに立っていましたが、少し離れたロングシートだけ、妙に大きな空間ができています。
理由はすぐに分かりました。
ワイシャツにネクタイ姿の男性が、長い座席に横になっていたのです。上着を丸めて枕のようにし、数人が座れそうなスペースを一人で使っていました。
目を閉じてはいるものの、本当に眠っているのかは分かりません。電車が揺れると足の位置を直し、立っている人の荷物が近づくと、わずかに体を動かしていました。
近くにいた年配の男性が、隣の奥さんへ小声で言いました。
「あれ、起きてるんじゃないか」
奥さんは男性のほうをちらりと見ました。
「やめときなさいよ。何されるか分からないし」
周りにも男性を気にしている人はいました。ちらちら見る人もいれば、困ったように目をそらす人もいます。
けれど、誰も声をかけません。
そのまま電車は2駅ほど走りました。
女性が同じ言葉をもう一度伝えた
大きな駅に着くと、ホームから多くの人が乗り込んできました。通路にも立つ人が増え、車内は一気に窮屈になります。
その中に、70代くらいの女性がいました。
女性は寝転んでいる男性の前まで来ると、少しだけ腰をかがめて声をかけました。
「すみません、座らせてもらえますか」
男性は目を閉じたままです。
女性はしばらく待ちました。しかし、男性が動く様子はありません。
すると今度は、先ほどより少しだけはっきりした声で言いました。
「すみません。座らせてもらえますか」
その声で、近くにいた乗客たちも男性のほうを見ました。
私も思わず視線を向けます。
数秒ほどして、男性のまぶたが開きました。
女性の後ろには、席が空くのを待つように何人もの乗客が立っています。
男性は周囲を見回すと、何も言わずに上着を手に取り、ゆっくり体を起こしました。
そして座席の端へ移動し、一人分の場所に座り直したのです。
「ありがとう。失礼しますね」
女性が隣に座ると、それまで立っていた人たちも次々と空いた場所へ腰を下ろしました。
年配の男性の奥さん、大きな荷物を持った若い女性、そしてもう一人の乗客。
ついさっきまで一人の男性が横になっていた場所に、あっという間に何人もの人が座りました。
女性は隣の人と目が合うと、少し照れたように笑いました。
「座れてよかったわ」
男性は膝の上に置いた上着を見たまま、何も言いませんでした。
しばらくすると周囲の視線もそれぞれの場所へ戻り、車内にはいつものざわめきが戻っていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














