「若い人が越してきてからなのよ」ゴミ置き場で犯人扱いされた私。だが、班長の一言で女性が黙った瞬間
名前を書いた袋を提げて
収集日の朝は、いつも七時半ごろに家を出る。燃えるゴミの袋には決まりどおり油性ペンで名前を書き、前の晩に口をしっかり結んでおく。
その日も袋を提げて、角のゴミ置き場へ向かった。
ネットの前には、近所の五十代くらいの女性が立っていた。足もとには、名前の書かれていない燃えるゴミの袋が一つ置かれている。
私が近づくと、女性はいきなりその袋を指さした。
「あなたでしょ」
「え…何がですか?」
「この袋よ。分別もちゃんとしてないし。あなたでしょ」
突然のことで、何を言われているのか一瞬分からなかった。
「違います。私のゴミはこれです」
私は手に持っていた袋を少し持ち上げ、名前を書いた部分を見せた。
それでも女性は納得していない様子だった。
「最近ずっとなのよ。カラスにつつかれて、片づけるのはいつもこっちなんだから」
「でも、私は曜日も分別も守っています」
「若い人が越してきてからなのよ」
出勤の時間も迫っていたが、このまま立ち去れば、自分が捨てたと認めたように受け取られそうで、その場を離れられなかった。
班長さんが袋を見て気づいたこと
そこへ、自治会の班長さんが通りの向こうから歩いてきた。六十代の男性で、腕には見回り用の腕章を巻いている。
「どうされました?」
女性はすぐに袋を指さした。
「この人の袋だと思うの。分別もされてなくて」
班長さんは私と女性を見たあと、袋の前にしゃがんだ。結び目には触れず、半透明の袋を外側から確認する。
袋の底には、平たい小さな缶がいくつも重なって透けていた。
「ペット用の缶詰みたいですね。お宅、ペットは飼っていますか?」
「いいえ。一度も飼ったことはありません」
班長さんはうなずくと、女性のほうを向いた。
「少なくとも、これだけでこの方の袋だと決めつけることはできませんよ」
女性は黙って袋を見た。
「名前も書いてありませんし、誰が出したものかは分かりません。確認できないうちは、決めつけないほうがいいでしょう」
組んでいた女性の腕がゆっくりほどけた。
しばらくして、女性は私のほうを見た。
「……ごめんなさいね」
「分かってもらえたなら大丈夫です」
班長さんは「分別をお願いします」と印刷された紙を取り出し、問題の袋に貼った。
「これはこのまま確認します。朝から大変でしたね」
私は自分の袋をネットの下に置き、二人に会釈した。
女性も小さく頭を下げると、そのまま自分の家のほうへ戻っていった。
出勤時間はぎりぎりになってしまったが、名前のない袋だけで犯人扱いされたままにならず、ほっとしながら駅へ向かった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














