tend Editorial Team

2026.09.30(Wed)

「あの、その枝って、うちの木ですよね?」5年間、隣の家の枝を切り続けた僕。様子を見ていた、隣人の息子さんが知らなかったこと

「あの、その枝って、うちの木ですよね?」5年間、隣の家の枝を切り続けた僕。様子を見ていた、隣人の息子さんが知らなかったこと

5年続いた秋の枝切り

秋の土曜日になると、僕は物置から脚立と剪定バサミを出していた。

左隣の庭から塀を越えて伸びてくる枝を、うちの側に出た分だけ切るためだ。

気づけば、もう5年になる。

隣に住んでいるのは、80代くらいのおじいさんだ。

5年ほど前から庭木に手を入れなくなり、秋になるとうちの庭まで落ち葉が大量に飛んでくるようになった。

掃いても翌朝にはまた積もっている。物置の横には、落ち葉を詰めた袋が毎年七つも八つも並んだ。

塀越しに2度お願いしたこともある。しかし返ってきたのは、どちらも同じような言葉だった。

「もう年だから、木を切るのはきついんだよ」

事情は分かる。それでも、枝をそのままにしておくわけにもいかなかった。

「お父さん、今年も切るの?」

「うん。雨どいが詰まると困るからな」

娘に答え、僕は脚立に足をかけた。

息子さんが見た落ち葉の袋

その日、枝を三本ほど落としたところで、塀の向こうから声をかけられた。

立っていたのは、しばらく顔を見ていなかったおじいさんの息子さんだった。

「こんにちは。あの、その枝って、うちの木ですよね?」

「はい。こっちに出てきた分だけです。毎年、僕が切っているんです」

息子さんは驚いた顔をした。

「毎年…ですか?」

「もう5年くらいですね。落ち葉のことも、お父さんには何度かお話ししていて」

僕が物置の横を示すと、息子さんは並んでいる落ち葉の袋に目を向けた。そして、家にいるおじいさんを呼んだ。

「父さん、お隣さんがずっと切ってくれてたんだって。自分でできないなら、今度から僕が業者さんを頼むよ」

縁側に出てきたおじいさんは、しばらく黙ったあと、小さな声で言った。

「……すまなかったね」

「業者さんにお願いしてもらえるなら、助かります」

向かいの家で車を洗っていたご主人も、そのやり取りに気づいたようで、こちらを見て一度うなずいた。

翌週には業者さんが入り、塀を越えていた枝はきれいに切りそろえられた。夕方には息子さんが菓子折りを持ってうちを訪ねてきた。

「気づくのが遅くなって、すみませんでした。来年からも業者さんに頼んでおきます」

「ありがとうございます。本当に助かります」

あの日を最後に、その秋は脚立も剪定バサミも物置から出さずに済んだ。

後日、おじいさんが縁側から先に声をかけてきた。

「来年の秋も、業者さんに頼んであるそうだよ」

短くなった枝先を見上げながら、ようやく毎年の枝切りから解放されたのだと実感した。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.10.14(Wed)

「すぐ代わるわよ」水族館で娘の順番を奪った女性。ヒトデに夢中だった彼女に、係員が告げた一言
tend Editorial Team

NEW 2026.10.14(Wed)

「こんなに頼んだ覚えはないぞ!」回転寿司で注文を手伝った私に怒鳴る男性客。注文履歴を見せると態度が一変
tend Editorial Team

NEW 2026.10.14(Wed)

「いらねえよ、そんなもん」毎朝レシートを拒否する男性客。だが、レジ横の案内を見て慌てて床にかがんだ理由
tend Editorial Team

RECOMMEND

2025.11.27(Thu)

えなこが鍛え抜かれた肉体で「SASUKE」に参戦へ! 握力40超のコスプレイヤーが持つ意外なルーツとは
tend Editorial Team

2026.08.07(Fri)

「この借金、何に使ったの?」豪華なプレゼントを贈り続けた恋人。だが、隠していた事実に別れを決意
tend Editorial Team

2026.03.25(Wed)

女優・佳那晃子さん(70)が死去、くも膜下出血で闘病13年。「ご冥福をお祈りします」「安らかに眠ってください」と惜しむ声...
tend Editorial Team