「夜は窓を閉めてもらえませんか」夜中まで聞こえてくる2匹のほえ声。近所の人たちが飼い主に伝えたこと
夜中まで聞こえてくる2匹のほえ声
仕事を退いて一年目の春、妻と二人で郊外の一戸建てに移り住みました。
庭いじりを楽しみにしていたのですが、暮らし始めて気になったのが、前の家で飼われている2匹の犬でした。
昼間だけならまだよかったのですが、夜になっても何度もほえる声が聞こえてきます。
飼い主は50代くらいの男性でした。ある朝、ごみ出しで顔を合わせたとき、思いきって声をかけました。
「すみません。夜中のほえ声が、うちの寝室までかなり聞こえてくるんです」
男性は少し驚いた顔をしてから、頭を下げました。
「そうでしたか。すみません。なんとかします」
しばらくすると、2匹は家の中で飼われるようになりました。ところが夜になっても窓は開いたままで、ほえる声は以前とあまり変わらず聞こえてきました。
眠ったと思ったところで起こされ、明け方にまた目が覚める。そんな夜が気づけば2週間ほど続いていました。
ある朝、妻に「また眠れなかったの?」と聞かれ、私はため息をつきました。
「うん。もう2週間くらいこんな感じだな。さすがにきついよ」
妻も困った顔で言いました。
「町内会長さんに相談してみない?うちだけじゃないかもしれないし」
同じことで困っていた家がほかにもあった
町内会長さんは70代くらいの男性でした。事情を話すと、しばらく考えてから口を開きました。
「実は、ほかのお宅からも同じような話を聞いているんです。一度、みんなでお願いに行ってみましょうか」
週末の夕方、会長さんを先頭に、近所の3軒の人と私で前の家を訪ねました。
玄関に出てきた飼い主は、私たちの顔を見て少し戸惑った様子でした。
会長さんが穏やかに切り出しました。
「責めに来たわけじゃないんです。ただ、夜のほえ声で眠れない家が何軒かありまして。夜だけでも、窓を閉めてもらえませんか」
すると、斜め向かいの奥さんも続けました。
「うちも孫が泊まりに来たとき、夜中に起きてしまったことがあって…」
飼い主はしばらく黙ったあと、小さくうなずきました。
「窓を開けておいたほうが、犬も涼しいだろうと思っていたんです。そんなに響いていたとは思いませんでした。すみません」
久しぶりに朝まで眠れた日
その週から、前の家の窓は夜になると閉められるようになりました。
すぐに完全に静かになったわけではありません。それでも夜中に目を覚ますことは少しずつ減り、ひと月ほどたつころには、ほえ声はほとんど気にならなくなっていました。
ある朝、目を覚ますと、窓の外はもう明るくなっていました。
妻が笑って言いました。
「あなた、ゆうべ一度も起きなかったわね」
「ああ。ここに来て、初めて朝までぐっすり眠れた気がするよ」
庭に出ると、2匹を連れた飼い主が前の家から出てきました。男性は私に気づくと、軽く手を上げました。
私も会釈を返しました。足元では、2匹の犬がしっぽを振っていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














