【ホテル怪談】「どんな部屋でも構いません」古い旅館で灯りを消すと、襖に浮かんだ女の影
夜遅くに見つけた古い旅館
これは、母の弟である叔父から聞いた話です。
叔父は冗談を好む人ではなく、いつも物静かで実直な人でした。
その叔父が一度だけ、説明のつかない出来事を体験したというのです。
仕事で西の街を訪れた叔父は、予定より帰りが遅くなり、その日のうちに自宅へ戻れなくなりました。
当時は今のように、携帯電話で簡単に宿を探せる時代ではありません。駅の周辺を歩き回り、ようやく見つけたのが、古い木造旅館でした。
時刻はすでに遅く、叔父は疲れ切っていました。
「今夜、泊まれる部屋はありますか」
「奥に一部屋だけございます。ただ、古くて少し狭い部屋ですが……」
宿の主人は、申し訳なさそうに答えました。
「眠れれば十分です。どんな部屋でも構いません」
叔父がそう答えると、主人は鍵を手に取り、長い廊下の奥へ案内してくれました。
通されたのは、宿の古い棟にある小さな和室でした。畳や柱には年季が入っていましたが、きれいに掃除されています。
叔父は特に気にすることもなく、布団に入りました。
灯りを消すと現れる影
ところが、部屋の灯りを消して間もなく、叔父は妙な気配を感じました。
目を開けると、押し入れの白い襖に、人のような影が浮かんでいます。
細い肩に、長い髪。着物姿の女性が、こちらに背を向けて立っているように見えました。
驚いた叔父が枕元の灯りをつけると、影は消えました。襖の前には家具も荷物もなく、人影を作るようなものは見当たりません。
「外の木か何かが映ったのだろう」
叔父はそう考え、再び灯りを消しました。
すると、先ほどと同じ場所に、また女性の影が浮かびました。
今度は、わずかに顔をこちらへ向けているように見えたそうです。
叔父はすぐに灯りをつけました。その後は消す気になれず、朝まで明るい部屋で過ごしました。
夜が明けると、叔父は宿の主人に昨夜の出来事を話しました。
「襖に、女性のような影が映ったんです。外に木でもあるのでしょうか」
しかし、その部屋の窓の外には細い路地があるだけで、影を落とすような木はないといいます。
主人はしばらく黙ったあと、戸惑った様子で口を開きました。
「実は、ずいぶん前にも、あの部屋へ泊まった方から同じ話を聞いたことがあります」
その客も、灯りを消すと襖に長い髪の女性が現れたと話したそうです。ただ、それ以降は何も起きなかったため、主人も見間違いだと思っていました。
「昨夜はほかの部屋が埋まっていたので、久しぶりにあの部屋を使ったのですが…」
主人はそう言って、何度も叔父に謝ったといいます。
叔父は宿を出る前、気になってもう一度その部屋を見せてもらいました。
朝の光が差し込む室内には、昨夜と変わらない白い襖があるだけでした。汚れも模様もなく、女性の姿に見えるものは何もありません。
叔父は帰宅すると、母にこの出来事を話しました。
私は後になって母から聞き、「疲れていたから、何かを見間違えたのでは」と言いました。
母も、その可能性はあるかもしれないとうなずきました。それでも、叔父が怯えた顔でこの話をしたことだけは、今でも忘れられないと語っていました。
叔父も母も、今はもういません。旅館の名前も場所も分からず、あの部屋がその後どうなったのかを確かめることもできません。
ただ、叔父が見たという女性の影は、灯りをつけた瞬間に消え、暗くすると同じ襖に戻ってきたそうです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














