「さっきからずっと待ってるんだけど」精算機の操作に戸惑う客を案内していた新人店員。店長が静かに取った対応
精算機の前で止まっていた列
曜日ごとの特売日で、夕方の売り場はかごを持った人でいっぱいだった。
どの列もなかなか進まず、私は手前のレジに並んだ。
レジに立っていたのは、まだ若い店員さんだった。首から下げた名札には、新人であることを知らせる一文が添えられていた。
そのレジは、店員さんが商品を通したあと、客が横の精算機で支払う仕組みだった。
私の二つ前にいた人が操作に迷ったようで、画面の前で手を止めていた。
店員さんはその人の横へ回った。
「すみません、ここを押していただいて…そうです。そのあと、お支払い方法を選んでください」
「現金だと、どれを押せばいいの?」
「こちらです。大丈夫ですよ、ゆっくりで」
すると、その人の後ろに並んでいた男性が大きく息を吐いた。
「ちょっと、まだかかるの?」
店員さんは振り返り、慌てて頭を下げた。
「申し訳ありません。もう少しだけお待ちください」
「さっきからずっと待ってるんだけど。早くしてよ」
「すみません…」
店員さんの声が小さくなった。精算機へ向き直ったものの、焦ったのか一瞬手が止まる。
見ていられなくなり、私は男性の後ろから声をかけた。
「私は急いでないので、大丈夫ですよ」
店員さんはこちらを見て、小さく頭を下げた。
「ありがとうございます」
操作していた人も申し訳なさそうに振り返った。
「ごめんなさいね。こういう機械、慣れてなくて」
「大丈夫ですよ。もう少しですから」
店員さんはそう答え、もう一度画面を指しながら説明を続けた。
店長が男性に伝えたこと
近くにいた別の店員が売り場の奥へ声をかけ、ほどなくして店長がやってきた。
店長はまず精算機の様子を確認してから、男性に向き直った。
「お待たせして申し訳ありません。いま操作のご案内をしていますので、もう少しお待ちいただけますか」
男性は眉を寄せた。
「でも、こっちはずっと待ってるんだよ」
「はい、お待たせしているのは分かっています。すみません。ただ、操作に困っているお客様をそのままにはできませんので」
店長は声を荒らげず、そう答えた。
男性は何か言いかけたが、店長は隣の閉じていたレジへ向かった。
「こちらも開けますね。お待ちのお客様、どうぞ」
番号灯がつくと、男性は何も言わず、かごを持ってそちらへ移った。
そのころには精算機の操作も終わり、先ほどの客は店員さんに何度か頭を下げてその場を離れた。
止まっていた列も、ようやく動き始めた。
私の番になると、店員さんは商品を受け取りながら、少し照れたように笑った。
「さっきはありがとうございました。急かされて、ちょっと焦ってしまって……」
「あれだけ言われたら焦りますよ。気にしなくて大丈夫です」
「ありがとうございます」
店員さんは今度は少し表情を緩め、商品を一つずつ通していった。
早く会計を済ませたい気持ちは、私にも分かる。それでも、機械の操作に困っている人を置いて先へ進むわけにもいかない。
男性を責めるのではなく、事情を説明したうえで別のレジを開けた店長の対応が、今でも印象に残っている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














