「大学費用を払ってくれてありがとう」法事で祖父に頭を下げた母→隣で陰口を漏らしていた伯父が絶句した瞬間
陰口を続けていた伯父
私が大学に合格したとき、母方の親戚で大学進学者は誰もいなかった。
祖父と祖母は心から喜んでくれて、四年間の費用を全額出すと申し出てくれた。両親も私も、その厚意を素直にありがたく受け取った。
その流れに、ただ一人だけ納得していない人物がいた。母の弟、私の伯父だった。
「他の甥もいるのに、なんで一人だけ援助するんだ」
伯父は親戚の集まりのたびに、私のいないところでそうこぼしていたらしい。話は親戚を回り、最終的に母の耳へ届いた。母は表で何も口にしなかったが、その目だけは穏やかではなかった。私本人に向かって陰口が直接届いたわけではないが、回り回って耳に入る不快感は、想像以上に長く尾を引いた。
祖父祖母には絶対に伝えない。けれど、自分の息子の進学を陰口で削られて、母が黙ったままでいられるはずもなかった。
私としても、お祝いの場が伯父の不満で薄められていく感覚が、ずっと胸の奥に引っかかっていた。
法事で見えた静かな反撃
機会は、親戚が集まる法事の席だった。
読経が終わり、座敷で皆がお茶を飲み始めたタイミングで、母はゆっくりと立ち上がった。まっすぐ祖父のもとへ向かい、両手をついて深く頭を下げる。
「大学費用を払ってくれてありがとう」
祖父は照れたように何度もうなずき、私の名前を出して笑った。
母はそのまま顔を上げ、座敷の反対側にいた伯父のほうへゆっくり目を向けた。
声の調子を意図的に大きくしたのが、隣で見ていた私にもはっきり分かった。
「いくら頑張ってもね、伯父さんの息子は学力的に厳しいみたい。でも、うちの子はちゃんと進学できる」
場が静まった。伯父の息子の進学先がどの程度の高校か、その場にいた親戚全員が知っていた。
伯父は口を開きかけ、視線を泳がせ、結局一言も返せないまま湯呑みに目を落とした。
母は何事もなかったように席に戻り、私の隣で煮物を口に運んだ。私はその横顔を見ながら、心の中で深く頷いていた。
(よく言ってくれた)
その日を境に、伯父の陰口は本当にぴたりと止んだ。
直接言い返すでもなく、声を荒らげるでもなく、ただ祖父への感謝のついでに一言を添える。
場の空気を壊さず、それでいて相手の弱みだけを的確に突く。
母のそのやり方を、私は今でも家族の中で一番冷静で鮮やかな反撃として覚えている。大学を出てから何年も経った今も、何かに腹が立つたびに、私はあの法事で見た母の落ち着いた横顔を思い返すようになった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














