「これ、誰がやったの?」社長案件の納品物を手にした部長の問いかけ→有能アピールを続けた女性社員の顔色が変わった瞬間
取引先から戻ってきた指摘の連絡
私の部署に異動してきた30代半ばの女性社員は、上司の前と同僚の前で、見せる顔がはっきり違う人でした。
部長の前では背筋を伸ばし、要点を整えた報告。
声のトーンまで作られている感じがしました。けれど現場では、添付ミスや数字の食い違いが続きます。指摘するたびに別の誰かや仕組みを引き合いに出して、自分の手元には責任を残さないのです。
「これ、私のせいじゃないですよね」
そう繰り返されるたびに、フロアの空気が少しずつ重くなっていったのを覚えています。私の机の引き出しには、彼女の差し戻し書類のメモが静かに溜まっていきました。
そんな彼女に社長から直接の重要案件が下りた日、私は静かに胸騒ぎがしていました。けれど部長は機嫌よく彼女を任命し、本人も自信たっぷりに引き受けてしまったのです。
納期の朝、取引先から戻ってきたのは厳しい指摘の連絡。会議室に納品物の控えが広げられました。
「これ、誰がやったの?」
部長の声は、いつもの彼女に向ける機嫌のよさではありませんでした。低く、平らな声。彼女の顔から、ふっと血の気が引いていったのが分かりました。
逃げ道が塞がれていく会議室
「あの、ここは別の方がチェックする予定で」
そう言いかけた彼女に、部長は静かに資料を差し出しました。提出時のメール、依頼書、彼女自身の署名が入った最終確認のシート。
言い逃れの余地は、もうどこにもありませんでした。
「私、ちゃんとやってます」
普段の口癖が、会議室では弱々しく聞こえました。
普段は受け流していた部長も、社長案件となれば話は違います。記録と証言を一つずつ突き合わせていく時間は、私にとっては積年のもやもやが少しずつ晴れていく時間でもありました。
後日、人事から彼女に別部署への異動が告げられました。
引き継ぎ書類を黙って受け取る背中を見送りながら、ようやくこのフロアの空気がまっすぐに戻った気がしたのです。
あの日以来、部長は私たち部下の報告書を一枚一枚、丁寧に読むようになりました。声の大きさや口ぶりではなく、紙の上に残された数字や根拠をきちんと見るようになったのです。
正直、彼女のことを完全に嫌いだったわけではありません。
本人なりに必死だったのかもしれないと思う日もあります。
それでも、社長案件で取引先に頭を下げ続けた数日間を思い出すと、やはりこの結末でよかったのだと、私は窓の外を見ながらそっと頷くのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














