「休みの日は家にいられないんです」隣の草刈りに悩んだ私。翌夏、ご主人が選んだ方法
休みの前になると気になった草刈り
金曜の夜、布団に入ってもなかなか眠れなかった。明日の朝、また隣の庭から草刈り機の音が聞こえてくるのではないか。そればかり考えて、暗い天井を見つめていた。
数年前に越してきた隣の家には、うちの何倍もある広い庭がある。
夏になると60代くらいのご主人が、朝から夕方までひとりで草を刈っていた。
多いときは週に2度。いったん始まると家じゅうに音が響き、テレビや動画の音も聞き取りづらい。僕は休みの日なのに、車で出かけて時間をつぶすこともあった。
その晩も何度も寝返りを打っていると、妻が小さな声で聞いた。
「また明日の草刈り、気にしてるの?」
「うん。また朝から始まるのかなって思うと、どうしてもね」
「最近、休みの前になるとずっとそんな感じじゃない?」
言われてみれば、その通りだった。
草刈りをしていない夜まで、「明日はどうだろう」と考えるようになっていた。
妻は少し間を置いてから言った。
「一度、困ってるって伝えてみたら?」
草刈りを終えたご主人に声をかけた
数日後の夕方、草刈りを終えたご主人が門の前で水筒の麦茶を飲んでいた。首にかけたタオルは汗で濡れている。
僕は思い切って近づいた。
「お疲れさまです。今日も一日がかりでしたね」
「この広さだからね。朝からやっても、なかなか終わらなくて」
僕は少し迷ってから、本題を切り出した。
「実は、草刈り機の音がうちまでかなり響いていて……。休みの日は家にいるのがつらくて、車で出かけることもあるんです」
ご主人はすぐには答えず、刈り終えた庭を振り返った。
そして腰に手を当てると、ぽつりと言った。
「そうか。それは悪かったね。実はわしも、腰がもう限界でね」
僕は少し驚いた。こちらが音に悩んでいた一方で、ご主人も広い庭をひとりで手入れすることに苦労していたらしい。
翌夏、庭に来た4人の作業員
次の夏、ご主人は草刈りを業者さんに頼んだ。
朝8時、軽トラックが2台止まり、揃いの作業着を着た4人が草刈り機を手に庭へ散っていった。
音そのものはこれまでと同じだったが、進む速さがまるで違う。昼前には最後の一角まで刈り終わり、エンジン音がぴたりと止んだ。
僕が庭を眺めていると、業者さんを見送ったご主人がこちらに気づいて手を上げた。
「見たかい。半日で終わったよ」
そして腰を軽くたたきながら笑った。
「こんなに早いなら、最初から頼めばよかったなあ」
その週末の前の夜、僕は布団に入ると、いつの間にか眠っていたらしい。
翌朝、妻が笑いながら言った。
「昨日、すぐ寝てたよ」
僕も思わず笑った。
もっと早く話していればよかったのかもしれない。ただ、ご主人にも事情があったことは、実際に話してみなければ分からなかった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














