「昨日は夜9時に帰ってきたでしょう」誰もいなかったはずの駐車場。近所の奥さんの一言で変わってしまった帰宅後の習慣
駐車場で声をかけられた日
私は実家の一戸建てに暮らし、車で通勤しています。
駐車場は家から少し離れた場所にあり、仕事が終わるとそこに車を停め、歩いて帰るのが日課です。
駐車場の斜め前には、60代くらいのご夫婦が住んでいます。家の窓は駐車場に向いていますが、以前は特に気にしたこともありませんでした。
ある日、車を降りたところで、庭の草むしりをしていた奥さんに声をかけられました。
「いつも勢いよく入ってくるでしょう。奥の柵にぶつからないか、見ていて心配なのよ」
「えっ、そうですか? すみません…」
「いいのよ。もう少しゆっくり停めてくれたら安心なんだけど」
実際に柵へぶつけたことは一度もありません。
それでも、心配してくれたのだと思い、翌日からは慎重に車を下げるようにしました。
ただ、普段から私の車の停め方を見ていたのかと思うと、少しだけ気になりました。
「昨日は夜9時に帰ってきたでしょう」
それから1週間ほどたった夕方のことです。
仕事から帰って車を降りると、庭の鉢植えの前にいた奥さんが、私に気づいて立ち上がりました。
「あら、おかえりなさい。今日は早いのね」
「こんばんは。今日は定時で帰れたんです」
何気なく答えると、奥さんはにこにこしながら続けました。
「昨日は夜9時に帰ってきたでしょう」
「えっ……あ、はい」
「いつもより遅かったから、どうしたのかと思って」
確かに前日は残業で、帰宅したのは夜9時でした。
でも、その時間はもう真っ暗です。車を降りたとき、庭にも道にも誰もいなかったはずでした。
「昨日はちょっと残業で…」
そう答えるのが精いっぱいでした。
奥さんは相変わらず穏やかな笑顔です。悪気があるようには見えません。
それなのに、帰宅時間まで覚えられていたことが、妙に気になりました。
その晩、夕食の席で母に話しました。
「ねえ、あそこの奥さん、私が何時に帰ってきたか知ってるんだけど…」
母は笑いながら答えました。
「あの奥さん、昔から親切な人よ。気にかけてくれてるんじゃない?」
「うん……そうなのかな」
私も、そう思うことにしました。
ところが数日後、また仕事から帰って車を降りたときのことです。
庭先にいた奥さんが、いつもの笑顔で話しかけてきました。
「今朝はいつもより10分早く出たのね」
「えっ……よく分かりましたね」
思わずそう返しましたが、内心は驚いていました。
確かにその日は、いつもより10分早く家を出ていました。母にさえ話していないことです。
帰宅時間だけではなく、朝の出勤時間まで把握しているのでしょうか。
奥さんは私を責めるわけでも、何かを尋ねるわけでもありません。
ただ、私の行動を知っているのです。
どうしてそこまで分かるのか、聞いてみたい気持ちはありました。でも、本人を目の前にすると、なかなか言い出せませんでした。
2年以上たっても気になる窓
あれから2年以上が過ぎました。
奥さんとの間でトラブルが起きたわけではありません。私は今も同じ実家で暮らし、同じ駐車場を使っています。
ただ、以前と変わったことが一つあります。
車を停めてエンジンを切ると、無意識に斜め前の家の窓を見上げてしまうのです。
奥さんが本当に窓から見ているのかは分かりません。ただ、あの何気ない会話以来、どうしても気になってしまいます。
今夜も車を降りる前に窓を見上げると、カーテンが少しだけ動きました。
偶然かもしれません。
それでも私は、以前のように何も気にせず車を降りることができなくなっていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














