「宿代だって、うちで出してるんだから」親戚の前で見栄を張る義母。だが、夫が明かした本当の支払者
バッグの中の領収書と、義母の自慢話
義父の三回忌の朝、私は宿の受付で宿代を支払い、領収書をバッグにしまいました。
夫の実家は遠方にあり、新幹線と特急を乗り継いで向かいます。
交通費だけでも夫婦2人で8万円。
宿代も含め、これまですべて自分たちで負担してきました。
実家に着くと、義母が私の手を取って言いました。
「遠いところ、よく来てくれたわね。疲れたでしょう」
その言葉だけで、私は十分うれしかったのです。
ところが、法要が終わり、親戚との食事が始まると、義母の様子が変わりました。
座敷の長い座卓には親戚が並び、私は夫の隣に座っていました。向かいには義母と親戚のおばさんたちがいます。
「遠くから来てもらうと、お金がかかるでしょう」
親戚の1人がそう言うと、義母は得意げな顔で答えました。
「そうなのよ。宿代だって、うちで出してるんだから」
私は思わず箸を止めました。
(えっ…宿代はさっき私が払ったのに?)
聞き間違いかと思いましたが、義母はそのまま話を続けます。
別のおばさんが交通費のことを尋ねると、義母は笑いながら言いました。
「本当は交通費くらい、子が出して当たり前よ」
私は思わず夫の顔を見ました。
交通費は自分たちで払うのが当然と言いながら、宿代は義母が負担していることになっています。
その宿代さえ、私たちが払っているのに…。
隣の夫は困ったように笑い、黙ってお椀に目を落としていました。
私は場の空気を壊したくなくて、無理に笑顔を作りました。
けれど、このままでは親戚に、義母から金銭的な援助を受けていると思われてしまいます。
悔しくても、なかなか口を開けませんでした。
「母さん、それは違うよ」夫が口を開いた瞬間
すると、膝の上で握りしめていた私の手に、夫がそっと手を重ねました。
夫は箸を置き、義母に向かって言いました。
「母さん、それは違うよ」
義母は驚いたように夫を見ました。
「何が?」
「宿代も交通費も、僕たちで払ってるよ。母さんに出してもらってないだろ?」
義母の表情が固まりました。
夫は続けました。
「別に、お金を出してほしいわけじゃないんだ。ただ、親戚の前で母さんが払ったことにされると、妻も困るよ」
それまでにぎやかだった座敷が、静かになりました。
義母は何か言いかけましたが、結局、口を閉じてしまいました。
すると、向かいに座っていた年上のおばさんが私に声をかけました。
「あら、そうだったの。遠いところ、毎回大変だったでしょう」
「いえ、そんな…」
私が答えると、隣のおばさんも「そうだったのねえ」とうなずき、煮物の鉢をこちらへ寄せてくれました。
義母はしばらくうつむいていましたが、やがて小さな声で言いました。
「…ごめんなさいね。ちょっと見栄を張っちゃったわ」
私は首を横に振りました。
「お義母さん、私たちは、来てくれてありがとうって言ってもらえるだけでうれしいんです」
義母は静かにうなずきました。
帰り際、玄関で義母が小さな包みを私に差し出しました。
「これ、少ないけど交通費。今まで悪かったわね」
私はお礼を言って受け取りました。
帰りの新幹線で、その包みをバッグの内ポケットにしまいました。朝、宿で受け取った領収書の隣です。
すると夫が、窓の外を見たままぽつりと言いました。
「もっと早く言えばよかったな。ごめん」
「ううん。ちゃんと言ってくれて、うれしかったよ」
そう答えると、夫も少しほっとしたように笑いました。
交通費も宿代も、これまでと変わらず自分たちで負担した帰省でした。
それでも帰り道の気持ちは、いつもよりずっと軽くなっていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














