「これ、3枚もあるんだね」紙の勤務表が廃止された日にぼやいた私。その後、突如始まったアンケートで気まずくなったワケ
手帳にはさめなくなった勤務表
月の初めに紙の勤務表を受け取り、手帳にはさむ。40代の私が事務の仕事を始めてから、毎月続けてきた習慣でした。
休みの日に予定を聞かれても、手帳を開けばすぐに確認できます。
ところが、その夏。社員8人ほどが会議室に集められ、50代の上司から勤務表について説明がありました。
「今月から、勤務表の紙は配りません。掲示板に貼るので、必要な人は写真に撮ってください。経費を少しでも減らしたいので」
向かいに座っていた若い社員は、さっそく携帯を取り出していました。
私は手帳を見ながら、少し残念に思いました。
写真でも確認はできますが、これまでのやり方に慣れていたからです。
すると上司が続けました。
「それと、今日は皆さんにアンケートをお願いします」
隣に座っていた同年代の同僚が立ち上がり、用紙を配り始めました。
受け取ってみると、左上を留めた3枚つづりです。めくっても質問が続いていました。
同僚が席に戻ってきたところで、私は用紙を見せながら小声で言いました。
「これ、3枚もあるんだね」
同僚は用紙を見て、少し笑いました。
私はてっきり、上司の指示で急に用意されたアンケートだと思っていました。
「勤務表は写真で撮るのに、アンケートは3枚もあるんだね」
そうぼやくと、同僚は曖昧に笑っただけでした。
アンケートの最後には自由記入欄がありました。
名前を書く欄はありません。
私はそこにも、紙を減らすならアンケートももう少し短くしてほしい、という内容を書きました。
「書き終わったら、裏返して置いておいてください」
アンケートを作った人は
会議が終わり、自分の机へ戻って仕事を始めたころです。
ふと横を見ると、回収したアンケートの束を持った同僚が立っていました。
「さっきのアンケートなんだけど」
私は顔を上げました。
「あれ、作ったの私なの。集計も私がやることになってて」
「え……そうだったの?」
てっきり上司が用意したものだと思い込んでいた私は、さっき本人の前で堂々と文句を言ったことに気づきました。
同僚は少し困ったように笑いました。
「質問、多かったよね」
「いや……ごめん。作った人が隣にいると思ってなくて」
「大丈夫。そういう意見も聞くためのアンケートだから」
そう言われると、余計に気まずくなりました。
結果の紙にあった「1件」
翌週、掲示板にアンケート結果をまとめた紙が1枚貼られていました。
そのいちばん下に、「紙を減らすのであれば、アンケートも簡潔にしてほしい」という意見が1件あったと書かれています。
内容を見た瞬間、私は思わず足を止めました。
「……1件なんだ」
もちろん匿名なので、誰が書いたかは書かれていません。
そこへ、たまたま通りかかった同僚が掲示板を見上げました。
「結果も出たね。必要なら、これも写真に撮っておいてね」
「……うん」
私は携帯を取り出しました。
勤務表を写真に撮ることにはまだ少し慣れません。それでも画面の中に映った「1件」という文字を見るたび、あの日、相手を知らないまま好き勝手にぼやいていた自分を思い出しそうです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














