「写真なんか撮らないから、平気でしょ」温泉で携帯を持ち込もうとした母親。だが、娘の言葉で手を止めた瞬間
湯船で動画を見ようとした母親
数年前、友人と泊まった温泉旅館で、夕食前に大浴場へ行ったときのことです。
脱衣所で着替えていると、30代くらいの母親と小学3年生くらいの娘が入ってきました。
娘は入口の横に貼られた注意書きを見上げています。
その隣で、母親は携帯電話を透明な袋に入れていました。
「動画の続き、湯船で見ちゃおうっと」
すると、近くにいた年配の宿泊客が袋に気づき、遠慮がちに声をかけました。
「あの、浴室の中は携帯電話を持ちこめないと思いますよ」
母親は手を止めずに答えました。
「写真なんか撮らないから、平気でしょ」
「でも、決まりになっているはずですよ」
そう言われると、母親は振り返りました。
「持って入るくらい、誰にも迷惑かけてないじゃない」
年配の客は困ったように黙り、私と友人も思わず顔を見合わせました。
娘が指さした注意書き
その空気を変えたのは、娘でした。
入口の注意書きを指さしながら、母親を振り返ります。
「ママ、これ読んで。『携帯電話を持ちこまないでください』って書いてあるよ」
母親の手が止まりました。
娘はそのまま、続きも読み上げます。
「ほかのお客さんが写ってしまうことがあるから、だって」
「え…」
母親は注意書きと、手にした袋を見比べました。さっきまでの勢いはありません。
そこへ入口から仲居さんが入ってきました。娘が指している注意書きを見ると、母親に穏やかに声をかけます。
「恐れ入りますが、浴室への携帯電話のお持ち込みはご遠慮いただいております」
母親は何も言い返さず、携帯電話を袋ごと貴重品ロッカーへ入れ、鍵をかけました。
「ママ、行こう」
娘に声をかけられ、母親はそのまま浴室へ向かいました。
年配の客もほっとしたような表情を浮かべています。友人が小さな声で、「私たちも行こうか」と言いました。
大人同士では険悪になりかけていたやり取りが、注意書きをそのまま読んだ娘の一言で止まったことが、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














