「ベランダのアリ、今週中に駆除してくださいね」管理人越しに催促された私。翌日、隣のベランダで分かった事実
管理人さんが運んでくる苦情
以前住んでいたマンションでのことです。私はベランダで小さな植木鉢を育てていました。
ある昼、1階の管理人室の前を通ると、60代の管理人さんが申し訳なさそうに声をかけてきました。
「お隣の方から、植木のことでお話がありまして。アリが来るそうなんです」
「えっ、うちの植木ですか?」
驚いて部屋に戻り、鉢を持ち上げて土の中まで調べましたが、アリは見当たりません。
どうやら隣の奥さんは、仕切り板越しに見える私の鉢を疑っているようでした。
ところが数日後、管理人さんから再び苦情が伝えられました。
「『ベランダのアリ、今週中に駆除してくださいね』とのことで…」
念のため駆除剤を買って置きました。それでも苦情は続きます。廊下で隣の奥さんと顔を合わせても、私の会釈に目を合わせてくれません。
週末、ゴミ置き場から戻ると、隣の奥さんが自分の部屋の前で腕を組んで待っていました。
「まだ来るのよ。もう、植木を処分しなさいよ」
「駆除剤も置きましたし、鉢にはいないんです」
「言い訳はいいの。管理人さんにも言っておくから」
強い口調に、それ以上何も言えませんでした。
部屋に戻った私は、ベランダで鉢を見つめていました。アリがいないことを、どうすれば分かってもらえるのでしょうか。
仕切り板の向こうにあった大量のゴミ袋
そのとき、隣のベランダから鼻をつくような匂いがしました。
気になって仕切り板の端から少し身を乗り出すと、思わず目を疑いました。
隣のベランダには、いっぱいに膨らんだゴミ袋が、手すりの高さまで積み上がっていたのです。
窓の向こうの部屋にもゴミ袋が見えます。さらに、その袋のすき間をアリが列になって動いていました。
「えっ……こんなに?」
あれほど私の植木を責めていたのに、隣のベランダがこんな状態だったとは思いもしませんでした。
私はすぐに1階へ下り、管理人さんに見たことを伝えました。
管理人さんは黙って話を聞き、手帳にメモを取りました。
「わかりました。明日、こちらでも確認します」
管理人さんが隣人に伝えた一言
翌日、管理人さんは私の部屋を訪れ、ベランダから仕切り板の向こうを確認しました。
そのあと、管理人さんと一緒に廊下へ出た私が部屋に戻ろうとしたときです。
管理人さんがお隣のチャイムを鳴らしました。出てきた奥さんに、落ち着いた声で話し始めます。
「こちらのゴミ袋にアリが集まっています。お隣の植木が原因とは言い切れません」
「えっ…でも、アリは向こうから来てるのよ」
奥さんが言い返すと、管理人さんは続けました。
「ベランダは避難経路にもなります。ゴミ袋は今週中に片づけてください」
奥さんは口を開きかけましたが、何も言いませんでした。
今まで私に何度も期限を突きつけていた奥さんが、今度は管理人さんから片づけるように言われたのです。
廊下の端にいた住人もこちらを見ていました。奥さんはうつむいたまま、静かに扉を閉めました。
翌週、隣のベランダからゴミ袋はすっかりなくなり、アリの苦情もぴたりと止まりました。
管理人さんは私の部屋まで来て、頭を下げました。
「お騒がせしました。植木は、そのまま置いておいてください」
その春、ベランダの小さな鉢には白い花がいくつも咲きました。
何度も処分するように言われた鉢でしたが、手放さずに済んで本当によかったと思っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














