「もう少し融通きかせてもいいと思うけどね」期限切れクーポンにこだわる男性客。だが、店長が崩さなかった対応
期限切れのクーポンを差し出した男性客
学生時代、カフェでアルバイトをしていたときの話です。
その日はお昼のピークで、レジには10人ほどの列ができていました。私は少しでも早くお客様を案内しようと、次々に注文を受けていました。
そんな中、50代くらいの男性がレジにやってきました。
男性は折り目のついた割引クーポンを取り出し、私の前に差し出しました。
受け取って確認すると、有効期限が3か月も前に切れています。
「申し訳ありません。こちら、期限が切れているのでお使いいただけないんです」
すると男性は、眉をひそめました。
「え?使えないの?せっかく持ってきたのに」
「すみません。期限内のものしか使えない決まりでして…」
「いや、でもさ。俺、毎週ここに来てるんだよ。今回くらいいいだろ!」
声が大きくなり、私は思わず身構えました。
「申し訳ありませんが、期限が切れているものは…」
「さっきからそればっかりじゃないか!常連なんだから、少しくらい融通きかせてくれよ!」
男性の声が店内に響き、後ろに並んでいたお客様もこちらを見ています。
「もういい。店長を呼んでくれ!」
私はどう答えればいいのか分からず、言葉に詰まってしまいました。
後ろの列では、腕時計を気にしているお客様もいます。早く対応しなければと焦るほど、頭が真っ白になっていきました。
店長が男性客に伝えたこと
騒ぎを聞きつけ、奥から女性の店長が出てきました。
店長が私の隣に立つと、男性はすぐに不満を訴え始めました。
「ちょっと聞いてよ。この店員、クーポンが使えないって言うんだよ。俺、いつも来てるんだから、今回くらい使わせてくれてもいいだろ?」
店長は男性の話を聞くと、レジ台に置かれたクーポンを手に取りました。
「確認させていただきますね。…ああ、こちらは3か月前に期限が切れていますね」
「それは分かってるよ。でも、たった一回くらい何とかならないの?」
「申し訳ありません。期限が切れたクーポンは、どのお客様にもお使いいただけないんです」
「だから、俺は毎週来てるんだって!」
男性は納得できない様子で、カウンターに手をつきました。
すると店長は、落ち着いた声ではっきりと伝えました。
「いつもご利用いただいているのは、本当にありがたいです。ただ、常連のお客様だからといって、特別に割引することはできません」
男性は一瞬、言葉に詰まったようでした。
「……もう少し融通きかせてもいいと思うけどね」
「申し訳ありません。ほかのお客様にも同じご案内をしていますので、ご理解いただければと思います」
店長はさらに、後ろの列へ目を向けました。
「ほかのお客様もお待ちですので、お会計されるかどうか、お決めいただけますか?」
男性も後ろを振り返りました。
並んでいたお客様たちは何も言いませんでしたが、じっとこちらを見ています。
男性はしばらく黙ったあと、小さく舌打ちしました。
「もういい。二度と来るか!」
そう言うと、クーポンを置いたまま、何も買わずに店を出ていきました。
扉が閉まったあと、私はようやく息をつきました。
すると店長が、私の肩を軽くたたきました。
「大丈夫? ちゃんと説明できてたから、気にしなくていいよ」
「ありがとうございます。すみません、うまく対応できなくて……」
「大丈夫。困ったらまた呼んでね」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けました。
次のお客様がレジに進んでくると、優しく声をかけてくれました。
「大変でしたね。ホットコーヒー、お願いします」
「ありがとうございます」
まだ少し震える指でレジを打ちながら、私は店長の言葉を思い返していました。
常連のお客様を大切にすることと、特別扱いをすることは違う。あの日、誰に対しても同じルールを守ろうとした店長の姿が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














