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2026.10.19(Mon)

「あの車、譲ってもらえませんか?」駐車場の管理会社に突然電話してきた男性。だが、何度断っても話が終わらなかったワケ

「あの車、譲ってもらえませんか?」駐車場の管理会社に突然電話してきた男性。だが、何度断っても話が終わらなかったワケ

駐車場の管理会社にかかってきた意外な電話

以前、不動産会社で月極駐車場の管理を担当していたころの話です。

契約手続きや空き区画の案内、駐車場の見回りなどが私の仕事でした。

電話での問い合わせも多く、普段は契約や空き状況についての相談がほとんどでした。

ある日の昼、私は事務所で駐車場の資料を確認していました。向かいの席では、女性の先輩が書類に目を通しています。

そこへ一本の外線が入りました。

「はい、お電話ありがとうございます」

「あの、そちらって駐車場を管理している会社さんですよね?」

電話の相手は、初めて話す男性でした。

空き区画の問い合わせかと思い、私はペンを手に取りました。

ところが、男性の口から出てきたのは予想もしない言葉だったのです。

「そちらの駐車場に、すごいスポーツカーがとまっていますよね。あの車、譲ってもらえませんか?」

「……えっ?お車を、ですか?」

思わず聞き返してしまいました。

男性によると、通りがかった際にその車を見つけ、駐車場の看板に書かれていた番号へ電話をかけたそうです。

「いやあ、本当に珍しい車なんですよ。あんな車、めったに見られませんから!」

声は弾み、興奮しているのが伝わってきました。

「申し訳ありません。あのお車はご契約者様のものですので、私どもからお譲りすることはできないんです」

「そうですよね……。でも、そこをなんとかなりませんか?」

私は困ってしまいました。

何度断っても続く、スポーツカーへの熱い思い

こちらから車を譲ることはできないと説明しても、男性はなかなか引き下がりません。

怒鳴ったり、乱暴な言葉を使ったりするわけではありません。ただ、どうしてもあの車が気になるようでした。

そして少し間を置くと、男性は遠慮がちに言いました。

「じゃあ……持ち主の連絡先だけでも教えてほしい」

「申し訳ありませんが、それは個人情報ですので、お教えできないんです」

「ああ、やっぱりそうですよね…」

ようやく電話が終わるかと思った、そのときです。

「でも、本当にいい車なんですよ。あの色もいいし、横から見た形もたまらなくて!」

男性は再び、スポーツカーの魅力を語り始めました。

車体の色や形だけでなく、エンジンの音の素晴らしさまで、話は止まりません。

私は「そうなんですね」「なるほど…」と相づちを打ちながら、どうやって話を終えようかと考えていました。

向かいの先輩も、なかなか電話を切れない私を不思議そうに見ています。

やがて男性の話が少し途切れたところで、私は静かに伝えました。

「それほど素敵なお車なんですね。きっと持ち主の方も、大切にされているんだと思います」

すると、男性はしばらく黙り込みました。

「……そうですよね。大事にしてもらえているなら、それでいいんです」

先ほどまでの勢いが嘘のように、落ち着いた声でした。

「いやあ、長々とすみませんでした。ありがとうございました」

そう言って、ようやく電話は終わりました。

受話器を置いた途端、向かいの先輩が身を乗り出してきました。

「ねえ、今の何の電話?ずいぶん長かったけど」

「それが……駐車場の問い合わせじゃなくて、車への愛の告白でした」

先輩は一瞬きょとんとしたあと、手で口を押さえて笑い始めました。

私もつられて笑ってしまいました。

それ以来、あの駐車場を見回るたびに、つい例のスポーツカーに目が向きます。

あの男性は、本当にあの車が好きだったんだな。

そう思い出すたび、少しおかしくて、なんだか温かい気持ちになるのです。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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