「大丈夫だって。誰も見てないよ」ホテルの朝食でパンを袋に詰め続けた父親。だが、出入口でスタッフに止められ、言葉を失った瞬間
料理を残したまま、パンを袋に詰める父親
少し前、話題になっていたホテルに泊まったときのことです。
朝食は好きな料理を自由に取れるビュッフェ形式で、会場には多くの宿泊客が集まっていました。
私は窓ぎわのテーブルで朝食を取っていました。
そこからは出入口もよく見え、隣のテーブルには両親と男の子の家族連れが座っていました。
ふと隣を見ると、お父さんのお皿には、から揚げやローストビーフが山のように盛られています。
「あんなに食べられるのかな…」
思わず気になってしまいましたが、お父さんは少し食べただけで箸を置いてしまいました。
お皿には、まだ半分以上の料理が残っています。
すると、お父さんは持参した大きめのビニール袋を取り出しました。
何をするのかと思って見ていると、テーブルにあったパンやクロワッサンを、次々と袋に入れ始めたのです。
男の子も気になったようで、袋をのぞきこみながら尋ねました。
「ねえ、そのパン、持って帰るの?」
「あとで食べるんだよ。どうせ余ったら捨てちゃうだろ」
お父さんは平然と答え、さらにパンを詰めていきます。
隣に座る奥さんが困った顔で袖を引きましたが、お父さんは気にする様子もありません。
「大丈夫だって。誰も見てないよ」
そう言って笑いましたが、実際には近くのお客さんも、コーヒーを運んでいたスタッフも、その様子に気づいているようでした。
お皿には料理がたくさん残っているのに、パンは持ち帰ろうとする。その光景が気になって、私もなかなか朝食に集中できませんでした。
出入口で呼び止めたスタッフの一言
やがて食事を終えたお父さんは、パンの詰まった袋を提げて出入口へ向かいました。
袋は大きくふくらみ、口元からクロワッサンの端が見えています。
出入口の外には、席が空くのを待つお客さんたちが並んでいました。
その列の手前まで来たところで、若い女性スタッフがお父さんに声をかけたのです。
「お客様、少々よろしいでしょうか」
「え?何ですか。急いでるんですけど」
お父さんは足を止め、少し面倒そうに振り返りました。
スタッフは袋に視線を向けると、落ち着いた口調ではっきりと伝えました。その声は私の席にも届いてきました。
「お料理のお持ち出しはご遠慮いただいております」
「衛生上の理由で、お部屋に持っていくこともお断りしているんです。申し訳ありませんが、こちらでお預かりしますね」
「いや、でも…。どうせ残ったら……」
お父さんは何か言い返そうとしましたが、途中で言葉を止めました。
近くで順番を待っていたお客さんたちが、やり取りに気づいてこちらを見ています。
その視線に気づいたのか、お父さんは気まずそうに目を伏せました。
「……分かりました」
小さくそう答えると、握っていた袋をスタッフに差し出しました。
「ありがとうございます。ご協力いただき助かります」
スタッフが丁寧に頭を下げると、お父さんは奥さんと男の子を連れて、そのまま会場を出ていきました。
先ほどまで「誰も見てない」と笑っていた姿とは、ずいぶん違って見えました。
私はその様子を見届けてから、残っていたサラダとスープに手を伸ばしました。
せっかくのホテルの朝食です。好きなものを選べるからこそ、食べきれる分だけ取って楽しみたいものだと、改めて感じた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














