「あの子の習字、下手すぎ(笑)」授業参観で悪口ばかり言うママ友。帰り道に感じた怒りの理由
習字の半紙の前で
授業参観の日、教室の壁には子どもたちの書いた半紙がずらりと貼り出されていた。
後ろに並んだ保護者たちは、自分の子の作品を探しては、隣の人と小声で感想を交わしている。
空気はどこか穏やかで、和やかな午後だった。
私の隣に来たのは、同じクラスの悪口好きで知られるママ友だった。
普段から送り迎えの数分でも、必ず誰かの噂を口にする人。
ほかの保護者たちも、彼女の声が始まると視線をそらすのが癖になっていた。
並んだ半紙を見回し、彼女は口元だけ動かす素振りで、はっきりと声を出した。
「あの子の習字、下手すぎ(笑)」
笑いの音まで添えた声は、明らかに前列の子の耳に届いていた。
半紙の前に立っていた小柄な子の肩が、ぴたりと止まる。
並び続ける子どもへの悪口
彼女の口は止まらない。
誰の文字が雑だ、誰の名前のバランスが悪い、誰の半紙が黒ずんで汚い。
大人の声量にも至らないけれど、囁きには大きすぎる微妙な音量。
狙ってやっているのが分かるから、余計にたちが悪い。
大人の悪口ならまだ流せる。
けれど子どもに向かって、本人の前で品評するなんて、想像もしたことがなかった。
書道は得意じゃなくても、緊張しながら筆を握った跡が、半紙にはちゃんと残っている。
墨をはみ出させた線にも、その子の集中の時間がにじんでいるはずだった。
少し離れた場所にいた別の母親が、こちらに視線を寄越し、ふっと息を吐いて顔を背けた。
あの反応で、聞こえているのは私だけではないと知った。気づいているのに、誰も口を挟まない。それがいちばん、息苦しかった。
けれど私は、何も言えなかった。「やめなよ」のひと言が、口の奥でつかえて出てこない。
曖昧な相づちすら打てないまま、教室の蛍光灯ばかり見ていた。波風を立てれば、矛先がこちらに向くのは目に見えていた。
帰り道までほどけない苛立ち
参観が終わり、校門を出てからも、彼女は誰かの参観姿の話題で笑っていた。
私は適当に手を振って先に駅へ向かう。
歩く時間が、いつもより長く感じる午後だった。
怒りは半分、彼女に。
残り半分は、止められなかった自分に。
子どもの後ろ姿が頭から離れず、家に着いてからも、半紙のしんとした白さばかりが目の裏に残っていた。
誰かが代わりに叱ってくれることを、心のどこかで待ってもいた。
次の集まりでも、私はきっと笑って隣に立つのだろう。
その想像が、一番苦かった。スマホの画面が暗くなる前に、私は深く息を吐いた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














