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2026.07.23(Thu)

「何分待たせんだよ!」満席ランチで怒鳴る客。だが、常連客の一言で状況が一変

「何分待たせんだよ!」満席ランチで怒鳴る客。だが、常連客の一言で状況が一変

怒鳴り声が響いた昼

ホールスタッフとして働くようになって、混雑には慣れたつもりだった。

それでもその日の昼は、いつも以上に慌ただしかった。満席のフロアを、注文票を片手に何往復もする。

次々と入る注文をさばきながらフロアを回っていると、奥のテーブルの常連客が優しく声をかけてくれた。

「大変そうだね、無理しないでね」。その言葉に、救われる思いだった。

ところが入り口側の席から、鋭い声が飛んできた。

「何分待たせんだよ!」

スーツ姿の男性が、腕時計を見せつけるように腕を突き出していた。周りの客が、一瞬こちらを振り返る。

「申し訳ございません。すぐにお持ちできるか、確認してまいります」

言い訳をせず、まっすぐに頭を下げた。慌てて厨房へ向かう背中に、また声が飛ぶ。

「遅いんだよ、使えないな」

その一言が、走り続けていた足に重くのしかかった。

場の空気が変わった瞬間

それでも、業務用の笑顔を貼りつけて厨房へ向かおうとした。

ここで言い返せば、もっと大きな騒ぎになる。ぐっと飲み込むしかない、といつも自分に言い聞かせていた。

足を止めかけたその時だった。

常連客が穏やかな、けれど芯のある声で言った。

「まあ落ち着けよ、みんな待ってる」

男性が、ぴくりと動きを止める。

常連客はにこやかに続けた。

「この店、混むのは美味い証拠だよ。この子も一生懸命やってる」

声を荒らげるでもなく、諭すような口ぶりだった。

周りの客の何人かが、静かにうなずいた。

急かしていた男性は、ぐるりと見回される形になって、言葉に詰まる。

突き出していた腕を、そっと引っ込めた。

開きかけた口から出たのは、反論ではなかった。

「…悪かったよ」。小さな声で、そう漏らした。

さっきまで見せつけていた腕時計を、気まずそうに袖で隠している。

「お待たせいたしました」料理を運ぶと、男性はばつが悪そうにうつむいたまま、静かに食べ始めた。

さっきの勢いは、どこにもない。食べ終えると、彼は逃げるように会計を済ませて出ていった。

張り詰めていた店内の空気も、いつの間にか元のにぎわいに戻っていた。走り回る足取りが、さっきよりずっと軽く感じられる。

帰り際、常連客が私にそっと言った。「頑張ってるの、ちゃんと見てるからね」。そう言い残して、笑顔で店を出ていった。

その日の夜、私はその一言を何度も思い返した。誰にも気づかれていないと思っていた必死さを、ちゃんと見ていてくれた人がいた。

見ていてくれる人は、確かにいる。それだけで、この仕事を続けていける気がした。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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