「荷物をどかしていただけますか」通路をスーツケースでふさいだ乗客。通ろうとした女性が立ち止まった直後、運転手が取った対応とは
夕方のバスで、通路をふさいでいたもの
買い物帰りに乗った路線バスは、夕方にしては空いていました。
座席にも余裕があり、私は後ろ寄りの席に座っていました。
ただ、車内の真ん中あたりで、大きなスーツケースが通路にはみ出していました。
持ち主らしい男性は窓側の席に座り、携帯の画面を見ています。
次の停留所で、70代くらいの女性がエコバッグを提げて乗ってきました。
女性は手すりにつかまりながら車内を進もうとしましたが、スーツケースの前で足を止めました。
その先には空席があります。しかし、そのままでは通れそうにありません。
女性は少し迷ってから、男性に声をかけました。
「すみません。荷物をどかしていただけますか」
男性は画面から目を離し、スーツケースを一度見ました。
「そこ、通れませんか」
女性は返事をせず、もう一度通路を見ました。荷物と座席の間にはわずかな隙間しかありません。無理に通れば、足を引っかけそうでした。
私も何か言ったほうがいいのか迷いましたが、そのとき、運転席から声が聞こえました。
発車する前に、運転手が声をかけた
バスはまだ停留所に止まったままでした。
運転手は乗り降りする人を確認していたため、女性が通路で立ち止まっていることに気づいたようでした。
「車内のお客様にお願いいたします。通路をふさいでいるお荷物がございましたら、移動をお願いいたします」
特定の人を名指しする言い方ではありませんでした。
男性はしばらく動きませんでしたが、運転手は発車せず、もう一度だけ案内しました。
「安全のため、通路の確保にご協力ください」
すると男性は携帯をしまい、スーツケースの持ち手をつかみました。荷物を自分の席の前へ寄せると、人が通れるだけの幅が空きました。
「ありがとうございます」
運転手がそう言うと、女性は男性の横を通り、空いていた席へ座りました。
それからバスは静かに発車しました。
大きな言い争いになったわけでも、誰かが男性を責めたわけでもありません。ただ、それまでふさがれていた通路が空いたことで、車内の空気まで少し落ち着いたように感じました。
男性は次の停留所でスーツケースを持って降りていきました。私はその背中を見送りながら、最初に女性が丁寧に頼んだときに荷物を寄せていれば、それだけで済んだことだったのにな、と思いました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














