「え、分からないの?店員なら売り場くらい覚えておいてよ」きつい言葉をかけた客。だが、悔しかったスタッフが取った行動とは
「店員なのに分からないの?」と言われた日
三十代になった今でも、スーパーの売り場を見ると思い出すことがあります。若いころ、私はスーパーでアルバイトをしていました。
担当する売り場は決まっていて、品出しや値札の確認が主な仕事でした。そのため、自分の担当以外の商品がどこにあるのかまでは、まだ十分に覚えていませんでした。
ある日、売り場で作業をしていると、男性のお客さんに声をかけられました。
「前にレジ横にあったミントタブレット、今はどこですか」
私はその商品を見た記憶はありましたが、移動先までは分かりませんでした。
「すみません。場所を確認しますので、少しお待ちいただけますか」
そう答えると、男性は明らかにいら立った様子で言いました。
「え、分からないの?店員なら売り場くらい覚えておいてよ」
さらに小さな声で何か言いながら、その人は私の返事を待たずに歩いていきました。
忙しかったのか、急いでいたのかは分かりません。ただ、その言い方が思った以上に胸に残りました。
次に聞かれたときは、迷わなかった
それから私は、自分の担当ではない棚も意識して見るようになりました。
品出しで店内を移動するとき、飲み物は何番の通路か、調味料はどの棚か、レジ周辺の商品はどこへ移されたのか。手が空いたときには先輩にも聞きながら、少しずつ覚えていきました。
誰かに指示されたわけではありません。
また聞かれたときに、「分かりません」と答えるのが悔しかったのです。
しばらくすると、商品の場所を尋ねられても、すぐに案内できることが増えました。
「ありがとう、助かったよ」
そう言ってもらえるだけで、以前とは違う気持ちで売り場に立てるようになりました。
そんなある日、以前の男性がまた来店しました。
向こうが私を覚えているかは分かりません。
そして、商品について尋ねてきました。
「すみません。このお菓子どこ?」
今度は迷いませんでした。
「こちらの通路の奥です。お菓子売り場の端に移っています」
そう答えると、男性は一度歩きかけてから私の顔を見ました。ほんの少し間があったので、前のやり取りを思い出したのかもしれません。
「ああ……ありがとう」
今度はそれだけ言って、教えた棚へ向かっていきました。
私も何か言い返すことはせず、そのまま品出しに戻りました。不思議と勝ったような気持ちにはなりませんでした。ただ、「今度はちゃんと答えられた」と少しだけほっとしたのを覚えています。
その後も、その男性を店で見かけることはありました。たまに商品の場所を聞かれることもありましたが、以前のような強い言い方をされることはありませんでした。
あの日の言葉が正しかったとは今でも思いません。それでも、店全体を覚えようと思うきっかけになったのは確かです。
嫌だった出来事まで無理に「よかったこと」にする必要はありません。ただ、そこから自分がどう動くかは選べるのだと、当時の私は少しだけ知った気がします。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














