「今日のランチは落ち着かないな」少し面倒だと思っていた常連客。だが、常連客への見方が、少し変わったきっかけとは
毎週来る常連客を、少し面倒だと思っていました
学生の頃、昼にランチを出す小さな店でアルバイトをしていました。
毎週決まった曜日になると、一人でやって来る常連のお客さんがいました。注文する料理はいつも同じです。ただ、その日の気分なのか、頼み方には毎回少しだけ違いがありました。
「今日はご飯、少なめでお願いします。あと、ソースをちょっと多めにしてもらえる?」
別の週には、「今日はいつも通りで大丈夫」と言うこともあります。
どれも厨房で対応できる範囲でしたが、忙しい時間帯には聞き間違えないよう気をつけなければなりません。私は注文票の端に書き込み、必ず復唱してから厨房へ伝えていました。
それでも当時の私は、正直なところ少し面倒に感じていました。
「毎回同じものを頼むなら、そのままでいいのに」
口には出しませんでしたが、そんなふうに思っていたのです。
料理を出すと、その人は一口食べてから、よく小さくつぶやきました。
「うん。今日はちょうどいいね」
大げさに褒めるわけでもありません。ただ、満足そうに食べ始める姿を見ると、こちらも少しほっとしたものでした。
いつもの席に座れなかった日
ある日の昼、その人が来たときには店内がかなり混んでいました。
いつも座っている壁際の席には、すでに別のお客さんがいます。私は空いていた別の席へ案内しました。
「今日は、こちらでも大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫ですよ」
その人は特に嫌な顔もせずに座り、いつもの料理を注文しました。
料理を運び、「お待たせしました」と声をかけて離れようとしたときです。
背中のほうから、ぽつりと声が聞こえました。
「今日のランチは落ち着かないな、いつもの席じゃないから」
文句を言うような口調ではありません。困ったように笑いながら、自分に言い聞かせるような声でした。
私は思わず振り返りました。
そのとき初めて、毎週同じ曜日に来て、同じ料理を頼み、同じ席で食べること自体が、その人にとって大切な時間なのかもしれないと思ったのです。
「細かい注文」に見えていたものが変わりました
その日も、その人はいつも通り食事を終えました。
会計のときには、「ごちそうさま。また来ます」と笑って帰っていきました。
それから私は、その人の見方が少し変わりました。
毎週決まった日に来てくれることも、少しだけ注文を変えることも、それほど面倒には感じなくなりました。
もちろん、混んでいるのにいつもの席を空けておくようなことはできません。ただ、その人が来たときにいつもの席が空いていれば、「いつものところ、空いていますよ」と案内するようになりました。
すると、その人は少しうれしそうに「ありがとう」と言って座ります。
細かな注文も、その人なりに昼の時間を楽しむためのものだったのかもしれません。
面倒だとしか思っていなかったことも、少し見方を変えると、その人が店に通い続けてくれている理由の一つに見えてきました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














