「夜中に音がするんです。何とかなりませんか」隣人からのクレーム。だが、放置していた私が気づいてしまった事実
二時を回った庭で、もう一度確かめた
秋のはじめの夜、どうにも寝つけませんでした。時計を見ると、二時を回っています。私は懐中電灯を持って庭へ出ました。
庭のすみには、家をオール電化にしたときに設置した給湯設備があります。夜間にお湯を沸かすため、深夜にも屋外の機械が動きます。
その音について、春に隣へ越してきた男性から何度か相談されていました。
「夜中に音がするんです。何とかなりませんか」
最初に言われたとき、私は機械の近くに立って耳を澄ませました。家の中でも確認しましたが、眠れないほどの音には感じませんでした。
機械は隣の家より、うちのほうが近い場所にあります。それなのに自分にはほとんど聞こえない。私はいつの間にか、「本当にこの機械の音なのだろうか」と思うようになっていました。
男性が再び訪ねてきても、返す言葉は同じでした。
「もう少し様子を見ますね」
けれど、実際には業者へ確認することもしていませんでした。そのまま春から秋まで過ぎてしまったのです。
その夜、私はいつも確認していた場所を離れ、自宅の敷地内を歩いて隣家に近い塀ぎわまで行ってみました。
すると、低く響くような音がはっきり聞こえました。
機械のすぐ近くで聞いていたときとは、感じ方がまるで違います。立つ場所が少し変わるだけで、こんなにも聞こえ方が違うのかと驚きました。
私はその場でしばらく耳を澄ませました。何度も言いに来た男性の困った顔を思い出し、ようやく申し訳なさがこみ上げてきました。
「聞こえましたか」とだけ聞かれた
次の日の朝、玄関先で男性に会いました。
私は自分から声をかけました。
「昨夜、確認しました。聞こえました。業者さんに相談して、あの音は何とかします」
男性は少し驚いた顔をしてから、静かにたずねました。
「聞こえましたか」
「はい。今までちゃんと確かめなくて、すみませんでした」
男性はそれ以上、責めることはありませんでした。
数日後、業者に来てもらい、夜間の音が隣家側で気になっていることを伝えました。設置状況を確認してもらい、隣家側へ音が響きにくくなるよう、屋外の機械の据え付け方を調整してもらいました。
そのとき、機械の向きや周囲の壁などによって、音の聞こえ方が変わることもあると教えられました。
何日かして庭に出ていると、塀ごしに男性から声をかけられました。
「この前から、ちゃんと眠れています」
その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けました。
私は、自分の家で気にならないというだけで、相手にも同じように聞こえていると思い込んでいました。
塀ぎわまで歩いて確かめるのに、五分もかかりませんでした。その五分を、私は何か月も先へ延ばしていたのだと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














