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2026.08.31(Mon)

「ねえ、酒ないの?」二度と来ないと言い切った客。だが、常連の一言で笑顔が溢れたワケ

「ねえ、酒ないの?」二度と来ないと言い切った客。だが、常連の一言で笑顔が溢れたワケ

「もう来ないからな」が、いつもの締めくくりだった

モーニングも出しているレストランで働いていたころの話です。

夜はお酒を出していましたが、日中は扱っていません。それでも、昼の時間帯に来るたび、お酒を頼もうとするお客さんがいました。

その人が来る曜日や時間はだいたい決まっていました。席に着くとメニューをほとんど見ないまま、こちらを呼びます。

「ねえ、酒ないの?一杯くらい出してくれてもいいでしょう」

「申し訳ありません。お酒は夜の時間帯だけなんです」

そう伝えると、決まって不満そうな顔をされました。

「またそれ?前にも言ったけどさ、昼だからって出せない理由が分からないんだよね」

私たちも何度も説明していたので、それ以上言えることはありません。

すると今度は、少し投げやりな声になります。

「じゃあ、もういいよ。紅茶でも持ってきて」

紅茶を運べば運んだで、カップを見ながら、

「これでお金取るんだ。まあ、いいけどさ」

と一言。

何を言っても、最後には何かひとつ文句が返ってくる。そんなお客さんでした。

そして会計になると、ほぼ毎回こう言うのです。

「もう来ないからな。ほんと、次はないよ」

最初のころは私も「本当に怒らせてしまったのかな」と気にしていました。

けれど、一週間ほどするとまた同じ時間に現れます。月に三回ほどは顔を合わせていたので、いつしかスタッフの間でも「あの方、今日そろそろ来るかもね」と分かるようになっていました。

「また来週」と言われて、言葉が止まった

ある日も、いつものやりとりがありました。

会計へ向かうために席を立ったその人は、やはり少し強い口調で言いました。

「ほんとにもう来ないよ。毎回同じこと言わせないでよ」

私は「申し訳ありません」と答えながら、心の中ではまた身構えていました。

すると、近くの窓際に座っていた常連のお客さんが、思わずといった様子で笑いました。

その常連さんも同じ曜日によく来る人で、二人は何度も店内で顔を合わせていました。

「でも、また来週も来るんでしょう?いつもの席、空いてるといいですね」

店内が一瞬、静かになりました。

その人は振り返って、

「いや、だから……俺はもう……」

と言いかけましたが、そこで言葉が止まりました。

常連さんは責めるような顔ではなく、ただ可笑しそうに笑っています。

すると、その人も困ったように口元をゆるめました。

「……まあ、気が向いたらね」

そう言ってレジへ向かっていきました。

隣にいた同僚が、小さな声で言いました。

「あの人、あんな顔するんですね」

私も少しだけ笑ってしまいました。

そして次の週。

やはり、その人はいつもの時間に店へ来ました。

席に着くと、少し気まずそうにメニューを開きます。

私が注文を聞きに行くと、こちらを見ずに言いました。

「今日は……紅茶でいいよ」

少し間を置いてから、付け足します。

「熱いやつね」

「かしこまりました」

それからも、その人が急に別人のように穏やかになったわけではありません。時々、不満そうなことを口にする日はありました。

ただ、「二度と来ない」という言葉だけは、あの日から聞かなくなりました。

こちらも以前ほど身構えずに接客できるようになり、その人が来ても「今日は何を言われるだろう」と緊張することは少なくなりました。

何度も繰り返していた言葉を、思いがけず誰かにそのまま受け止められたことが、少しだけ気恥ずかしかったのかもしれません。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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