「最近、家のこと何も話してくれないね」家族の話をしなくなった私。親族が寂しそうにこぼした一言
同じ話を、何度も説明するのに疲れていた
ある時期から、私は親族に話す内容を少しずつ変えるようになりました。
会う回数を減らしたわけでも、電話を避けるようになったわけでもありません。天気のことや季節のこと、育てている花のこと。以前と変わらず、他愛のない話はしていました。
「今年、ずいぶん早く咲いたのよ。まだ寒いのにびっくりしちゃって」
「ほんと?うちなんて、まだ全然よ」
そんなふうに話していれば、表向きは以前と何も変わりません。
ただ、家族の込み入った話だけはしなくなりました。
以前の私は、家族に何かあると、親族のひとりによく話を聞いてもらっていました。弟のこと、親のこと、姉のこと。ひとりで抱えているより、聞いてもらうだけでも気持ちが楽になったからです。
そのかわり、話すたびに必ずお願いしていました。
「これ、まだほかの人には話してないの。心配させたくないから、ここだけの話にしてね」
すると相手は、いつもすぐに答えました。
「分かってるって。そんなの誰にも言わないよ」
私はその言葉を信じていました。
ところが数日すると、別の親族から電話がかかってきます。
「ねえ、聞いたんだけど…大丈夫なの?」
「えっ、誰から聞いたの?」
そう聞くと、相手は少し言葉を濁します。
「いや、まあ……ちょっと耳に入って」
その瞬間、「またか」と胸の奥が重くなりました。
もちろん、みんな心配してくれていたのだと思います。話を聞いた人も、悪気があって広めたわけではなかったのかもしれません。
それでも私は、まだ伝えるつもりのなかった相手に、一から事情を説明しなければなりませんでした。
「大丈夫だから。決まったらこっちから話すね」
そう答えることが何度も続き、だんだん疲れてしまったのです。
そこで私は決めました。
家族の大事なことは、必要な人に自分から直接伝える。それまでは、誰にも話さない。
そうすると、その人との付き合いは今までどおりなのに、「聞いたんだけど」と突然かかってくる親族からの電話だけが、ぱたりとなくなりました。
「前はもっと話してくれたのに」
しばらく経ったころ、その親族が家に遊びに来ました。
いつものようにお茶を飲みながら、庭の花や近所の話をしていると、相手がふと黙りました。
そして、少し寂しそうに言ったのです。
「ねえ……最近、家のこと何も話してくれないね。前はもっと話してくれたのに」
やっぱり気づいていたのだと思いました。
私は少し迷いましたが、ごまかすのはやめました。
「うん。大事なことはね、これからは私から本人に直接伝えようって決めたの」
相手は驚いたように私を見ました。
「でも私、別に悪い意味で誰かに話してたわけじゃ……」
「それは分かってるよ」
私はそう答えました。
責めたいわけではありませんでした。ただ、もう同じことを繰り返したくなかったのです。
「心配してくれてるのも分かってる。でもね、私がまだ話してない人から『聞いたよ』って電話が来ると、正直ちょっとしんどかったの」
そこまで言うと、相手は湯呑みに目を落としました。
「……そっか」
しばらくして、小さな声でそう返ってきました。
気まずい沈黙はありましたが、言い争いにはなりませんでした。
私は少し間を置いてから、テーブルの横に置いていた鉢を指しました。
「それより見て。これ、また増えちゃったの。もう置くところないのに」
すると相手も鉢をのぞき込みました。
「また買ったの? 去年も減らすって言ってなかった?」
「言った。言ったけど、見ると欲しくなるのよ」
「それじゃ減らないじゃない」
二人で少し笑って、その日の話はそこで終わりました。
今でも、その人とは普通に会っています。こちらから誘うこともあれば、向こうから顔を出してくれることもあります。
付き合いをやめたわけではありません。
ただ、話すことと、話さないことを自分で選ぶようになっただけです。
以前のように、家族のことが知らないうちに親族の間を回り、「聞いたよ」と電話がかかってくることもなくなりました。
今では玄関先で会っても、話すのは花のことや天気のこと。それくらいの距離が、私にはちょうどよかったのだと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














