「君の部屋、ちょっと見てみたいな」食事に誘ってきた職場の男。だが、しつこい態度に着信拒否をした
悪びれない同僚
職場でときどき話す男性から、仕事帰りに食事に誘われた。
自由な雰囲気の人だと思っていたので、軽い気持ちで応じた。
席につくと、男は自分の暮らしぶりを、隠すでもなく語りはじめた。
「自分、いまネットカフェ暮らしなんですよ」
「え、そうなんですか」
「前の会社を辞めたとき、色々あって家に住んでないんですよね!」
男はどこか誇らしげですらあった。
定まった住まいもないのに、その暮らしをまるで自慢するように語る。
話が進むほどに、私の中の違和感はふくらんでいった。
「でも縛られないって、最高じゃないですか。ノマドですよ、ノマド」
聞こえのいい言葉で包んでしまう。
その神経に、私はうすら寒いものを感じた。
着信拒否にした夜
食事のあと、駅へ歩く道すがら、男はぐいぐいと距離を詰めてきた。
ふいに手を握ろうとしてきたので、私はストールを両手で持ち直し、そっとかわした。
それでも男は、まるで意に介さない。にやけた顔で、ふいにこう口にした。
「君の部屋、ちょっと見てみたいな」
「どうして、そんな話になるんですか」
「いいじゃない、減るものでもないし」
私の住まいを、しきりに知りたがる。
冗談めかしてはいるが、目は笑っていなかった。こちらが言葉を濁すほど、男は前のめりになって食い下がってくる。
その必死さが、かえって薄気味悪かった。
「悪いけど、今日は帰ります」
私は足を止め、はっきりとそう言い切った。
愛想笑いは、もうしなかった。
「そんな冷たくしなくても」
「これで失礼します」
男は一瞬ひるみ、「あ、いや、そんなつもりじゃ」と言い訳を並べはじめた。
けれど、その顔からは余裕が消えていた。さっきまでの押しの強さは、どこかへ消えてしまっている。
私はそれ以上取り合わず、改札を抜けて一人で電車に乗った。
背後で男がまだ何か言っていたが、振り返らなかった。もちろん、帰る方向は本当の家とは逆へ。
家に着いてから、私は男の連絡先を着信拒否に設定した。
少しの迷いもなかった。少しでも情に流されれば、相手はそこにつけ込んでくる。そういう手合いだと、もう分かっていた。
翌日からは、職場で必要な受け答えをするだけにとどめた。
二人きりで会うことは、二度となかった。
もしあのとき流されていたら、住まいを知られ、押しかけられていたかもしれない。そう思うと、今でもぞっとする。
自分の身は自分で守るしかないのだと、骨身にしみた出来事だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














