「鍵のことも、これからは兄に聞いてください」5年間、空き家になった実家の管理をしていた夫。だが、夫が見せた本音とは
また夫のところにかかってきた電話
休日の朝、夫の電話が鳴りました。相手は親戚で、誰も住んでいない夫の実家に置いたままの荷物を取りに行きたいので、玄関の鍵をどうしたらいいかという話でした。
夫はしばらく黙って聞いていましたが、最後に静かに答えました。
「鍵のことも、これからは兄に聞いてください。僕だけでは決められないので」
怒っているような言い方ではありませんでした。ただ、今までとは明らかに違う返事でした。
夫の実家は、義両親と義兄の一人が相次いで亡くなってから、誰も住まない家になっていました。
夫は早いうちに荷物を整理し、今後どうするか家族で決めたほうがいいと考えていました。ところが、もう一人の義兄が強く反対しました。
「まだ片づけなくていいだろ。思い出のある家なんだから、勝手に触らないでくれ」
実家を出てから30年近く暮らしていない義兄でしたが、家をそのまま残しておきたい気持ちは強かったようです。
夫も無理に進めることはせず、そこで話は止まりました。
ところが、それから実際に家のことで連絡を受けるのは、なぜか夫ばかりでした。
「草が道路のほうまで伸びているよ」
親戚や近所から知らせが入るたび、夫は車を出して確認に行きました。ちょっとした作業にかかった費用も、自分で払うことが増えていきました。
片づけようとすれば止められる。それでも何か起きれば、自分が動く。
そんな状態が5年近く続いていたのです。
「僕では決められない」と言うようになった
あの電話をきっかけに、夫は対応を変えました。
家について判断を求められると、まず義兄へ確認してもらうようにしたのです。
「兄が家を残したいと言っているから、僕の判断だけでは動けないんです」
最初は戸惑う人もいました。
「今までずっと、あなたに聞いていたから」
そう言われると、夫は申し訳なさそうに笑っていました。
「そうですよね。でも、このままだと僕が全部決めているみたいになってしまうので」
夫は義兄を責めることもしませんでした。ただ、自分だけで引き受けるのをやめたのです。
しばらくすると、家のことで夫に直接連絡が来る回数は少しずつ減っていきました。
5年分を、ようやく手放せた
その後、親戚が集まったときに実家の話になりました。
夫が「これからは兄にも確認してもらうようにしている」と話すと、事情を知っていた親戚が言いました。
「今までずっと一人で動いてたものね。そりゃ大変だったでしょう」
夫は少し困ったように笑いました。
「まあ、できることはやろうと思ってたから。でも、さすがに全部は無理だなって」
大げさな言葉ではありませんでしたが、私はその返事を聞いて少し安心しました。
親族づきあいをやめたわけでも、義兄と縁を切ったわけでもありません。
ただ、「家をどうするか決めること」と「頼まれるまま動くこと」を、夫はようやく分けて考えられるようになったのだと思います。
以前なら実家の用事で予定を空けていた休日にも、今では自分の用事を入れるようになりました。
5年間抱えていたものを全部解決したわけではありません。それでも、夫にとっては大きな区切りになったようです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














