「人の財布の中まで聞くものじゃないよ」収入を聞き続ける親戚。だが、別の親戚が静かに止めた瞬間
久しぶりの食事の席で、質問が止まらなくなった
親族が久しぶりに集まったときのことです。何年ぶりに顔を合わせる人もいて、食事が始まったころは昔の話で盛り上がっていました。
もう建て替わってしまった家のことや、子どものころに叱られた話。誰かが思い出すたびに笑いが起きて、私も懐かしい気持ちで聞いていました。
ところが、しばらくすると、ある親戚が私の仕事について聞いてきました。
「そういえば、まだ仕事は続けてるの?」
「まあね。まだしばらくは働くつもりだよ」
最初はその程度でした。
しかし、「どんな仕事をしているの」「忙しいの」と質問が続き、やがて話は収入のことに移っていきました。
「それなら、けっこうもらってるんじゃないの?」
私は笑ってごまかしました。
「いやいや、そんな大したもんじゃないよ」
それで終わるかと思ったのですが、相手はさらに身を乗り出しました。
「でも、実際どのくらいなの?年金だけになっても困らないくらいはあるんでしょ」
そこまで聞かれるとは思わず、私は返事に困りました。
悪意があるようには見えません。久しぶりに会ったので、いろいろ聞きたくなっただけなのでしょう。
それでも、親族がそろっている席で収入や老後のお金の話まで答える気にはなれませんでした。
「いやあ、そこまで聞かれても困るよ」
苦笑いしながらそう返しましたが、相手はまだ気づいていない様子でした。
「そうなの?今どんな仕事してるの。結婚は?」
私は箸を置きました。
「まあ、その話はもういいじゃない」
強く言ったつもりはありませんでしたが、さすがに少し疲れていました。
別の親戚の一言で、その話題だけが静かに終わった
すると、向かい側に座っていた別の親戚が、こちらを見ながら口を開きました。
「もうそのへんにしときなよ。人の財布の中まで、さすがに聞くものじゃないよ」
叱りつけるような言い方ではありませんでした。
少し笑いながら、「そこから先は聞かなくていいだろう」と伝えるような口調でした。
聞いていた親戚も、その一言でようやく気づいたようです。
「ああ、そうか。ちょっと聞きすぎたな」
そう言って笑い、箸を取りました。
誰かが責められたわけでもなく、大げさに謝ることもありませんでした。ただ、お金の話だけがそこで終わったのです。
少し間が空いたあと、別の親戚が昔住んでいた家の話を始めました。
「そういえば、あそこの家もずいぶん変わったよな」
「もう昔の面影なんてほとんどないよ」
そこから話題はまた昔話に戻り、いつの間にかみんなで笑っていました。
収入のことを聞いてきた本人も、そのあと気まずそうにしている様子はありませんでした。昔の失敗談を思い出しては、自分から笑い話にしていました。
私は内心ほっとしました。
自分で強く言えば、相手との間に妙なしこりが残ったかもしれません。だからといって、ずっと答え続けるのもしんどいものです。
あの親戚が軽い調子で間に入ってくれたことで、誰かを悪者にすることなく話題を変えられました。
それから何度か同じ親戚と顔を合わせていますが、お金のことを細かく聞かれることはなくなりました。
会えば普通に話しますし、親戚づきあいも以前と変わりません。
ただ、「ここから先は聞かない」という線だけが、あの日を境にはっきりしたように感じています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














