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2026.09.01(Tue)

「一緒に課題やってもらえませんか」職場にいた大学生のアルバイト。だが、私が引いた線とは

「一緒に課題やってもらえませんか」職場にいた大学生のアルバイト。だが、私が引いた線とは

相談の中身が、少しずつ変わっていった

塾講師をしていたころ、職場に大学生のアルバイトがいました。高校の英語教師を目指していて、勉強の進め方について私に相談してくることがよくありました。

最初のうちは、「この参考書、使いやすいですか」「こういう問題はどう勉強しましたか」といった質問ばかりでした。

私も答えられることならと思い、授業の合間に話をしていました。

ところが、しばらくすると頼まれる内容が少しずつ変わっていきました。

大学の課題について聞かれるようになり、ある日の授業後には、ノートと資料を抱えて私のところへやってきました。

「すみません。これ、明日までなんですけど……一緒に課題やってもらえませんか」

困ったような顔をしていたので、すぐに突き放す気にはなれませんでした。ただ、課題の中身までこちらが考えてしまったら、本人のためにもならないと思いました。

「書き方の相談ならできるけど、課題そのものを一緒にやるのはやめておこう」

彼は少し黙りました。

そこで私は、机の上にあった英語の問題集を指しました。

「その代わり、授業が終わったあとなら勉強の質問は見るよ。分からないところを持ってきて」

「……それでもいいですか」

「それなら大丈夫」

彼は少し照れたように笑って、「じゃあ、お願いします」と頭を下げました。

答えではなく、考え方を聞くようになった

それから彼は、勤務が重なった日の授業後に、ときどき問題集を持ってくるようになりました。

私が見るのは長くても十数分ほどです。答えを教えるのではなく、「どこまでは分かった?」「ここは何を聞かれていると思う?」と確認するだけでした。

最初のころは、問題を見るなり「これ、どうやるんですか」と聞いていた彼も、少しずつ質問の仕方が変わりました。

「ここまでは自分でやったんですけど、この先が分からなくて」

自分で考えた跡が、ノートにも残るようになっていました。

ある日、コピー機の前で別の講師が言いました。

「最近、あの子よく勉強してますね」

「前より粘るようになりましたね」

そう答えながら、私も少しうれしくなりました。

以前のように「手伝ってください」と丸ごと頼むことはなくなり、自分で考えてから質問を持ってくるようになっていたからです。

半年後に聞いた言葉

それから半年ほどたったころ、彼が顔を出しました。

アルバイトはすでに辞めていましたが、大学で教師になるための勉強を続けているそうです。

「久しぶりです。ちゃんと続けてますよ」

そう言いながら、以前より少し落ち着いた顔で笑っていました。

そして帰り際、ふと思い出したように言いました。

「あのとき、課題を手伝ってもらえなかったじゃないですか」

一瞬、嫌だったのかと思いました。

けれど彼は続けました。

「最初はちょっと困りましたけど、自分でやるしかないなって思えたんです。今は、そのほうがよかったと思ってます」

私は「そう」とだけ返しました。

助けることと、代わりにやることは同じではありません。

あのとき断ったことで彼が変わった、とまでは思いません。ただ、自分で進むきっかけの一つにはなったのかもしれない。帰っていく背中を見ながら、そんなことを思いました。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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