「お別れ、どんな様子だった?」叔父の葬儀で棺に携帯を向けた喪主。私が感じた違和感とは
最後のお別れの列が、途中で止まった
叔父の葬儀でのことです。
棺のまわりには親族が持ち寄った花や、生前の写真が何枚か並べられていました。
親族席は前から三列ほどあり、喪主を務める従姉妹とその家族が一番前に座っていました。
私は母と並んで後ろの席に座っていましたが、最後のお別れが始まると、親族は順番に立って棺の前へ進みました。
「皆様、順番にお別れをお願いいたします」
葬儀社の方の案内で列が動き始めたとき、前のほうから声がしました。
「少しだけ、待っていただけますか」
声をかけたのは従姉妹でした。席に戻ると、膝の上に置いていたかばんを開け、何かを探し始めます。
母が小さな声で、「何か入れ忘れたのかしら」と言いました。
やがて従姉妹が取り出したのは、黒い携帯電話でした。
そのまま棺のそばへ戻ると、両手で携帯を構え、棺の中へ画面を向けました。
パシャ、と撮影音が響きました。
一度で終わると思っていたのですが、従姉妹は少し立つ位置を変え、さらに二枚ほど撮影しました。
誰も、その場では何も言えなかった
それまで動いていた列が止まりました。
私の斜め前にいた叔母が従姉妹のほうを見ましたが、何も言いません。
従姉妹の夫も席に座ったままで、子どもたちは床へ目を落としていました。
私も驚きましたが、葬儀の途中で声を上げることにもためらいがありました。
誰かが何か言うだろうと思っているうちに、撮影は終わりました。
「止めてしまって、失礼しました」
従姉妹はそう言うと、三秒ほどで自分の席へ戻りました。
葬儀社の方が再び案内を始め、止まっていた列も動き出しました。その場で従姉妹を咎める人はいませんでした。
ただ、それまでとは少し空気が変わったように感じました。
あとになっても、あの音だけが残っていた
火葬を待っていると、遅れて到着した親戚が母の隣に座りました。
「お別れ、どんな様子だった?」
母は少し迷ってから、「途中で写真を撮っていて、みんな驚いていたよ」とだけ答えました。
親戚は「そうだったの」と短く返し、それ以上は聞きませんでした。
精進落としの席でも、そのことを大きな話題にする人はいませんでした。従姉妹も普段どおり家族と話していて、葬儀はそのまま終わりました。
その後、四十九日の案内も届きました。ただ、母は「今回はいいかな」と言い、うちから参加する人はいませんでした。
棺の中を写真に残したかったことには、従姉妹なりの理由があったのかもしれません。叔父との最後の姿を残しておきたかったのかもしれないとも思います。
それでも、あの静かな会場に響いた撮影音と、誰も何も言えずに顔を見合わせていた時間は、今でも妙に記憶に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














