「いや、あれは完全に段取りのミスでしょ」朝の電車で20分続いた電話。だが、前に立っていた年配女性が注意した結果
発車してすぐ、隣から電話の声が聞こえた
その朝の電車は、通路にも人が立つほど混んでいました。私は端の席に座り、膝の上に鞄を置いていました。
隣に座っていた若い男性が、扉が閉まって間もなくスマートフォンで話し始めました。
「いや、あれは完全に段取りのミスでしょ」
どうやら相手は同じ職場の人のようでした。最初はそれほど大きな声ではありませんでしたが、話が続くにつれて少しずつ語気が強くなっていきます。
「こっちは前の日に言ったんだって。聞いてなかったのはあっちだから」
仕事上の行き違いについて話しているようでした。男性にも言い分があるのでしょう。それでも、静かな朝の車内では、その声がよく響いていました。
斜め前に立っていた学生がイヤホンを押し込み、近くの人がちらりと男性を見ることもありました。しかし、誰も声をかけません。
私も「もうすぐ終わるだろう」と思いながら座っていましたが、通話はそのまま20分ほど続きました。
男性の正面には、白髪をまとめた年配の女性が手すりにつかまって立っていました。
前に立っていた女性が、静かに声をかけた
駅に着いて何人かが降り、車内に少し余裕ができたときでした。
年配の女性が男性のほうへ少し近づきました。
「すみません。電話の声、少し小さくしてもらえませんか」
男性はスマートフォンを耳に当てたまま、驚いたように顔を上げました。
「…あ、すみません」
女性はそれ以上何も言わず、元いた場所へ戻りました。
男性は一度周囲を見回してから、通話相手に「あとでかけ直す」と伝え、電話を切りました。
そのあとはスマートフォンを鞄にしまい、黙って座っていました。
注意されたことに腹を立てる様子もなく、かといって車内で大げさに謝ることもありませんでした。ただ、自分の声が思っていた以上に周囲へ聞こえていたことに、そのとき初めて気づいたように見えました。
車内に、いつもの音が戻った
次の駅で男性は席を立ち、そのまま電車を降りていきました。
扉が閉まると、聞こえてきたのは電車の走行音と、駅名を知らせるアナウンスだけでした。
長い説教をしたわけでも、強い言葉で責めたわけでもありません。それでも、困っていることを短く伝えるだけで状況が変わることもあるのだと感じた朝でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














