「うちの旦那昇進したの」産後にやっと会えた旧友。だが、久しぶりに再会した喜びが消えたワケ
2年越しでようやく合わせた予定
大学からの友人とランチに行けたのは、私が出産してから10か月、お互いに2年近く対面で会えていなかった末のことだった。
彼女のほうが先に出産していて、私が育休に入ってからやっと予定が噛み合った。乳児を連れて移動できるよう、駅から近くて個室のある店を彼女が予約してくれた。
気遣いはちゃんとある人だ。
学生時代は彼女と何時間でも他愛なく話せた。バイト終わりにファミレスで朝までいたこともある。
今日もそんな延長線のつもりで、私は産後の身体の不調や眠れない夜の話を聞いてもらえると思っていた。お互いに母親になった以上、共通の話題は山のようにあるはずだった。
夫の昇進と新築マンション
子を抱っこ紐から下ろした直後、近況の入り口を探っている私に、彼女のほうから先に言葉が飛んできた。
「うちの旦那昇進したの」
続けて、夫の役職名と新しい年収レンジ、そして駅前タワーマンションの上層階に引っ越したという話が、注文を取りに来た店員を挟みながら一気に流れてくる。
スマホを取り出した彼女は、内見動画と新居のリビング写真までスクロールで見せてくれた。私はミルクの哺乳瓶を抱えながら、頷くタイミングを必死に探した。
話題はそのまま、子の習い事リストへ移っていく。
英会話、公文、ベビースイミング。
学生時代の彼女からは想像もできない教育熱を、こちらの相槌の薄さにも気づかず、休まずに言葉にしていく。
私が「夜泣きで全然眠れてなくて」と切り出した一瞬だけ、彼女は「うちは生後半年で寝てくれたから助かった」と返して、また自分の話題に戻った。
店を出てから気づいた違和感
2時間後、店を出るころには、私の表情筋がうまく動かなくなっていた。駅までベビーカーを押す道のりで、息を吐くたびに肩が下がっていくのが自分でも分かった。
彼女は会計のときも「次は私の家でランチしよう」と笑顔だった。誘いを断る理由はない。なのに、すぐに「ぜひ」と返せない自分がいた。
悪意のある人ではない。本当にそう思う。ただ、頑張ってきた結果を共有する方向にしか会話が走らない相手と、私はもう昔のようには向き合えなくなっていた。
同じ「ママ」になった瞬間に、共通の話題が増えたはずなのに、私たちはむしろ別の道に分岐したらしい。
帰宅して子を寝かしつけ、リビングのソファに座ってからスマホを開いた。彼女のSNSには新居のキッチン写真が新しく上がっていた。いいねを押す指が止まる。返事を保留したままの「次のランチ」の予定だけが、私の通知欄に静かに残った。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














