「来年検討しましょう」使わないのに貯まっていく自治会の会費。帰り道に感じた虚しさの理由
ごみを盾にした半強制加入
田舎に移住してきて8年、最初に提示されたのが町内会への加入だった。
「入らないとごみは出せませんから」と、笑顔の役員に告げられた。
冗談かと思ったが、その目はまったく笑っていなかった。
都会のマンション暮らしから来た身には驚いたが、集積所の管理権限を盾にされれば従うほかない。
判を押して、月々の会費が口座から引き落とされる生活が始まった。
当初は夏祭りや町内一斉清掃、年末の餅つきと行事が連なり、会費の使途も目に見えていた。
ところがコロナ禍を境に行事は次々と中止になり、復活する気配もなくなった。
役員の中には「もう面倒だからやらない」と公言する人も出てきた。
「来年検討しましょう」
会費を見直すべきだという声が総会で上がるたび、古参の役員はそう言って議題を持ち越した。
来年になっても、また来年になった。
膨らみ続ける口座残高
毎年配られる決算書には、使い切れない会費が「繰越金」の名で積み上がっていた。
行事費の予算は計上されているのに、催しがないまま剰余金として翌年に送られる。その繰り返しで会計の数字だけが太っていく。
若手の世帯から「半額に下げてはどうか」「徴収月を減らしてはどうか」と提案が出る。
私も何度か同調して頷いてきた。だが古参の一言で全てが「持ち越し」になる。
議論の場はあっても、結論を出す権限を誰が持っているのか曖昧なまま。みんな分かっているのに、誰一人として最初の一言を切り出さない。
役員選出も持ち回りで、票を取って覆そうとする気概のある人もいなかった。
8年目の総会で見えた構図
今年の総会は1時間で終わった。提案、検討、持ち越し。完璧に予定調和の流れだった。
帰り道、同じく若手枠で参加した近所の住民と顔を見合わせた。
彼も苦笑していた。「来年こそは」と話す気力すら、もう双方になかった。
口座から引き落とされ続ける会費、使い道のない繰越金、決まらない議題。決断を下す誰かが現れるまで、この町の自治会は同じ夜を繰り返していく。膨らんだ通帳残高の数字を眺めながら、誰も責任を取らない議論の重さに、私は静かに息を吐いた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














