「違うものを作っちゃいました!」注文を間違えた私。後日、また来た常連客がかけてくれた言葉
謝る私より先に、レジの列を見ていた人
学生時代、カフェでアルバイトをしていました。昼どきになると注文が一気に重なり、レジには列ができ、ドリンクを作る手もなかなか追いつきません。
その日も、店内はかなり慌ただしくなっていました。
「そっちの注文、先に出して大丈夫だよ」
同僚に声をかけられ、私は「わかった」と返事をしながらカップを取りました。ところが伝票を追っているうちに頭の中の順番がこんがらがり、別のドリンクを作ってしまったのです。
間違えた相手は、何度も来てくれている常連のお客さんでした。
「すみません!違うものを作っちゃいました!すぐ作り直します」
慌てて謝ると、その人は私の後ろにあるレジの列へちらりと目を向けました。
「あ、大丈夫だよ。急いでないから、そんなに慌てなくていいよ」
怒られるかもしれないと思っていた私は、一瞬返事ができませんでした。
常連客はそのまま窓際の席へ行き、鞄から文庫本を取り出しました。私はもう一度注文を確認し、今度は間違えないようにドリンクを作ります。
「お待たせしました。本当にすみませんでした」
席まで持っていくと、その人は本から顔を上げました。
「ありがとう。忙しいねえ」
責めるような言い方ではありませんでした。その言葉を聞いて、ずっと肩に力が入っていたことに初めて気づきました。
何日か後、また店に来てくれた
それから何日かして、その常連客がまた来店しました。
今度は昼の混雑が落ち着いた時間です。注文されたドリンクを渡すと、その人がカップを受け取りながら言いました。
「この前は大変そうだったね。レジの列、ずっと長かったし」
その人が口にしたのは、私がドリンクを間違えたことではなく、あの日の混雑のことでした。
「あの日、ほんと焦っちゃって。間違えるし、全然追いつかないし…」
苦笑しながらそう言うと、常連客も少し笑いました。
「見てたら分かったよ。あれだけ混んでたら大変だよね」
それだけ言うと、その人は「じゃあ、また」と店を出ていきました。
大げさに励まされたわけでもありません。それでも、失敗したことより、必死に働いていたことを見てくれていた人がいた。そのことが、当時の私には思っていた以上にうれしかったのです。
それからも昼になればレジには列ができましたし、焦ってしまう日もありました。ただ、そんなときは一度注文を見直して、「一つずつやろう」と自分に言い聞かせるようになりました。
忙しかったあの日、常連客がレジの列を見ながらかけてくれた何気ない言葉は、今でもよく覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














