「ドンドンうるさい!」下の階の住人からの苦情。だが、住人と一緒に原因を調べた結果
突然の怒鳴り込み
そのアパートで、私は二階の部屋を借りていた。
階下の住人とは、廊下やゴミ捨て場でよくすれ違う。こちらが挨拶をしても、返ってきたためしはない。無口で気難しい人なのだろう、と勝手に思っていた。
ある夜のことだった。インターホンが立て続けに鳴り、ドアを開けると、階下の住人が険しい表情で立っていた。
「ドンドンうるさい!」
毎晩、天井から重い音が響いて眠れない。
あなたの足音だろう、静かにしてほしい。そう、一息にぶつけられた。
頭ごなしの言い方に、かっとなりかけた。
けれど、ここで言い返しても水掛け論になるだけだ。それに、眠れないほど困っているのは、きっと本当なのだろう。
相手を責め返す前に、まず話を聞こうと思った。
私はひとつ息を吐いてから、できるだけ静かに答えた。
「その音がする時間、私はいつも仕事で家にいないんです」
「じゃあ、誰が音を立ててるって言うの」
「それを、一緒に確かめたいんです」
相手は、え、という顔をした。
予想していた反論とは、違ったのだろう。声の勢いが、少しだけ弱まった。
深夜の音の正体
「一度、確かめませんか」
決めつけ合っていても、何も解決しない。
私は、音のする時間に立ち会ってほしいと頼んだ。
相手はしばらく黙り込んでから、分かりました、と低い声で応じた。
その夜、私は部屋の電気をすべて消し、鍵をかけて外に出た。
二人で建物の外階段に並んで、じっと耳を澄ます。
しばらくして、ドン、ドン、と低い音が壁を伝ってきた。
それは、誰もいない私の部屋から聞こえてくるのではなかった。
「あなた、外にいるのに…音がしてる」
相手はそうつぶやいたきり、立ち尽くしていた。
翌日、大家に立ち会ってもらって点検すると、正体は共用の給水ポンプだった。
深夜に動くたび、その振動が配管を伝い、上の階へと響いていたらしい。
誰か一人のせいなどでは、そもそもなかったのだ。
それを聞いた階下の住人は、みるみる表情を変えた。目を泳がせ、しばらく口ごもったあと、深々と腰を折った。
「ごめんなさい。ずっと、あなたのせいにしていました」
大家も「これは、住んでいる人には分かりませんよ」と取りなしてくれた。
ポンプが直ると、夜の音はぴたりとやんだ。静かな夜が、ようやく二人の部屋に戻ってきた。それ以来、階下の住人は私を見かけるたび、自分のほうから明るく声をかけてくれる。あのとき感情でぶつからず、落ち着いて話してよかった。そう、心から思える出来事だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














