「弟さんは隣町に越したね」隣の敷地から感じていた視線。買い物帰り、バッタリ会った隣人との会話に恐怖した瞬間
15年、視線だけの隣人
その隣人とは、15年もの間、奇妙な距離を保ってきた。
毎朝カーテンを開けると、隣の敷地から、いつもこちらをじっと見ている。ただ、それだけ。
雨の日も、風の強い日も、その人は同じ場所に立っていた。
私と目が合っても、悪びれる様子はまるでない。
道で会えば挨拶は交わすし、向こうも普通に返してくる。
何をされるわけでもないから、私は「少し変わった人」と思うことにして、やり過ごしてきた。
(見られている気はするけれど、気のせいかもしれない)
そう自分に言い聞かせて、15年。あの視線の意味を、私は深く考えないようにしていた。
今思えば、それが間違いだったのかもしれない。
家族の記録を、すべて
ある日、買い物の帰りに、道端でその隣人とばったり会った。
逃げるわけにもいかず、私は足を止めた。
はじめは天気の話や、近所の工事の話。それだけなら、いつもと変わらない立ち話だった。
ところが世間話の流れで、隣人はごく自然に、私の家族の近況を口にし始めたのだ。
「弟さんは隣町に越したね」
心臓が跳ねた。弟の引っ越しなど、この人には一度も話していない。
「お兄さんは遠くへ行かれて、もうあまり帰ってこられないんでしょう」
否定も肯定もできないまま、私はただ立っていた。
時期まで、正確だった。
(なんで、そんなことまで)
言葉が出なかった。この人はきっと、この15年ずっと、私という人間の記録をとり続けてきたのだ。
あの毎朝の視線は、そのためのものだったのかもしれない。
恐怖で、私はその場から一歩も動けなくなった。何と返せばいいのかもわからなかった。
あの日を境に、私は隣人と目を合わせることも、挨拶をすることもやめてしまった。
それでもきっと、あの視線は今朝も、カーテンの向こうから私を見ている。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














