「金を払うから、もう別れてくれ」浮気がバレた夫。だが、ギリギリまで私が別れなかった理由
深夜のリビングで切った手札
深夜のリビングのテーブルに、探偵から受け取った報告書を置いた。
夫の浮気相手の自宅の住所も、勤め先の名前も、写真も、すべてそこに記されている。
私は何ヶ月もかけて、この分厚い紙の束を黙って揃えてきた。
怒りに任せて問い詰めたりはせず、ただ静かに、証拠だけを積み上げて。
その日、夫は些細な喧嘩のあとに「家を出る」と宣言したばかりだった。
浮気に気づいていても、これまでは泳がせてきた。
けれど、向こうから家を出ていくとなれば話はまったく別だ。守るものが何もなくなった今こそ、動くべき時だった。
「相手の家も職場も、全部わかってるのよ」
報告書を見た夫の手が止まった。
観念した夫は不倫を認め、けれど反省より先に、自分の逃げ道を探し始めた。
「金を払うから、もう別れてくれ」
焦る側が、いつも弱い
その一言で、私の腹は決まった。
お金で片づけて、さっさと身軽になりたい。
そんな都合のいい話に、なぜ私が乗らなければいけないのか。
「離婚はしません」
夫は一瞬固まり、それから声を張り上げ、やがて言葉を失った。
最後にはソファに沈み込んで、両手で顔を覆ってしまった。
早く別れたい人にとって、別れられない毎日ほどこたえるものはない。
婚姻関係が続く限り、夫には私の生活費を負担する義務がある。
同時に、不倫相手には弁護士を通じて慰謝料を請求した。
焦って早く別れたがる夫を横目に、私はただ淡々と、決められた手続きを進めるだけでよかった。
慌てる必要があるのは、いつだって逃げたい側だ。
慰謝料の支払いに追われた不倫相手は、引っ越したばかりの築浅のアパートを引き払い、築50年のぼろアパートへ移ったと風の便りに聞いた。
誰に頼まれたわけでもなく、自分で招いた結末だ。私は同情も、ざまあみろという気持ちも、もう持たなかった。
1年後に渡した離婚届
1年。私はそれだけの時間をかけて、心ゆくまで区切りをつけた。そして気が済んだ頃に、はじめて離婚届に判を押した。
「これで終わりにしましょう」
夫はその後、不倫相手にもあっさり捨てられたという。
帰る場所をなくして実家に戻り、四十を前に昔の子供部屋で寝起きしていると、後から人づてに知った。
慌てて手放そうとした人が、最後に一番多くを失う。私は声を荒らげることも、泣いて取り乱すこともしなかった。ただ、自分のペースを崩さなかっただけ。それで十分だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














