「これ、なくなっちゃうんじゃない?」朝食会場で焦って割り込もうとした家族。だが、家族が最後尾へ戻った理由
朝食会場の列に、横から入ってきた一組
旅先の旅館で迎えた朝でした。朝食会場はほとんどの席が埋まり、大皿が並ぶ台の前には、料理を取る人の列ができていました。私も皿を持って、その最後尾に並んでいました。
しばらくすると、家族連れの一組が列の途中へ横から入ってきました。
料理の台には、残りが少なくなっている大皿もあります。そのうちの一人が、台のほうを見ながら言いました。
「これ、なくなっちゃうんじゃない?」
近くにいたスタッフさんが気づき、すぐに声をかけました。
「恐れ入りますが、最後尾にお並びください」
すると家族の一人が、残り少ない料理を指さしました。
「家族の分だけなんです。もうなくなりそうで…」
スタッフさんにもう一度最後尾を案内されると、その人たちは料理の台を気にしながらも、その場で少し迷っている様子でした。
私の前に並んでいた人も、何となくそちらを見ています。朝食を取りたいだけなのに、列の流れが止まり、少し落ち着かない空気になっていました。
私も「ちゃんと並べばいいのに」と思いましたが、旅先の朝から言い合いになるのも嫌で、黙って待っていました。
湯気の立つ大皿が運ばれてきてから
そのとき、奥の扉から別のスタッフさんが出てきました。
両手で抱えていたのは、できたての料理が盛られた大皿でした。残り少なくなっていた料理の横に置くと、湯気がふわりと上がります。
スタッフさんは料理を置きながら、周囲にも聞こえる声で案内しました。
「お料理は順番にお出ししますので、こちらでお待ちください」
そして、続けて言いました。
「こちらも、あと二回お出しする予定です」
それを聞いた家族連れは、新しい大皿を見て顔を見合わせました。
「まだ出るんだって」
そう小さく言うと、今度はそのまま列の最後尾へ向かっていきました。
並んでいた人たちも、また順番に料理を取り始めます。誰かが責めたわけでも、家族連れが大げさに謝ったわけでもありません。
近くにいた年配の女性が、新しく運ばれた料理を見ながらぽつりと言いました。
「ちゃんと出てくるなら、慌てなくても大丈夫ね」
その言葉どおり、少し前までの落ち着かない空気はいつの間にか消えていました。
もちろん、料理がなくなりそうに見えたからといって、列の途中から入っていいわけではありません。それでも、あの家族連れも「自分たちの分がなくなるかもしれない」と焦っていたのでしょう。
私は順番が来てから料理を取り、窓際の席に座りました。少し離れた席では、あの家族連れも普通に朝食を楽しんでいました。
新しい大皿が一つ運ばれ、短い案内があっただけで、会場に朝らしい落ち着きが戻ったことが印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














