「どういう考えでやってるんだ」試合に出られない息子を見てコーチに詰め寄った父親。だが、返ってきた答えは
試合の日に初めて姿を見せた父親
子どものスポーツチームでは、練習の日に保護者が交代で手伝いに入ります。
私も何度も当番を担当し、コーチが子どもたちに声をかける姿を見てきました。
ただ、ひとりだけ、一度も当番に来たことのない父親がいました。
その父親が初めてグラウンドに姿を見せたのは、晴れた公式戦の日でした。
父親は、ベンチの端に座ったままの自分の子を見て、コーチのほうへ歩いていきました。少し離れたところにいた私にも、声ははっきり聞こえました。
「すみません。なんで、うちの子は出ていないんですか」
「試合に出る子は、こちらで決めています」
コーチは父親より20歳ほど年上ですが、顔を合わせるのはこの日が初めてでした。父親は腕を組み、納得できない様子で続けました。
「決めてるって、何を見て決めてるんですか」
コーチが答えかけたところで、父親は言葉を重ねました。
「どういう考えでやってるんだ」
その声に、ベンチの子どもたちがいっせいに振り返りました。
父親の子だけは帽子のつばを下げ、足もとを見つめています。そばにいた保護者たちも、何も言えずにやり取りを見守っていました。
父親の問いに、コーチが返した言葉
コーチは表情を変えず、父親に向き直りました。
「まず、落ち着いてください」
「こっちは理由を聞いてるんですよ。答えてくださいよ」
「練習での様子を見て、試合に出る子を決めています。今日のメンバーも、その判断です」
言葉を区切ってから、コーチは続けました。
「お父さんはこれまで練習に来られていませんよね。判断の過程をご覧になっていないので、疑問に思うのかもしれません。でも、試合直前の今、ここで長くお話しすることはできません」
父親は口を開きかけましたが、言葉が出てこないようでした。こちらに目を向けたあと、組んでいた腕を下ろします。
コーチはグラウンドの外にある観客席を示しました。
「もう試合が始まります。お帰りいただくか、あちらで見ていてください」
周りの保護者たちも、静かにうなずいていました。
父親はそれ以上何も言わず、観客席の端へ移動しました。そして試合のあいだ、黙ってグラウンドを見ていました。
試合が終わると、コーチはベンチの端にいた子のそばへ行き、肩を軽くたたきました。
「次の練習で、待ってるからな」
その子は帽子のつばを上げ、大きくうなずきました。父親は観客席の端に、まだひとりで座っていました。
子どもの出番が気になる気持ちは分かります。ただ、声を荒らげても、子どもにとって居心地の悪い時間になるだけかもしれません。試合後のその子の表情が、私の心に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














