「傷なんてあった?」怪我した長男の後頭部を見ていない夫→合わない価値観に体の震えが止まらなかった
帰宅を待っていた報告
その土曜は、私がシフトの当番でした。
小学生の長男と幼い下の子を夫に預けて、朝から仕事に出たんです。
父親と過ごす一日を、子どもたちは楽しみにしていました。
仕事を終えて帰ると、二人が、その日あったことを競うように話してくれました。
夫に公園へ連れて行ってもらったのだと、うれしそうでした。
「父ちゃんと相撲したの」
ほほえましく聞いていた私の耳に、長男のこんな言葉が飛び込んできました。
「転んで、頭ごつんってした」
相撲で転んだ、というだけなら子どもにはよくあること。
それでも念のためと、私は長男の後頭部に指を伸ばしました。
髪の奥で、指先がぬるりと止まりました。
傷が割れて、血がにじんでいたんです。
妻が凍りついた一言
私はすぐに、居間でくつろいでいた夫のところへ行きました。
「頭ぶつけたって聞いたけど、傷、どうした」
夫が返したのは、こんな一言でした。
「傷なんてあった?」
その瞬間、体の芯が凍りつきました。
頭を打ったのは知っている。なのに、傷があるかどうかを見てすらいなかったんです。
「血、出てるよ。消毒は」
「してない。泣いてなかったから」
転んだ子の頭を、一度も確認していない。
当然、洗いも消毒もしていませんでした。泣かなかったから大丈夫。夫のなかでは、それで話が済んでいたんです。
そばで長男が、きょとんと私たちを見上げています。
本人はけろりとしているぶん、余計に背筋が寒くなりました。
私は洗面所へ長男を連れて行き、傷口を洗い流しました。ぱっくりと開いた傷を消毒する間も、夫の言葉が耳から離れませんでした。
この人には任せられない
手当てを終えても、胸の奥のざわつきは消えませんでした。
「泣かなかったら、気づかないままだったの」
私が尋ねると、夫は不思議そうな顔をしました。
子どもが痛がらなければ、傷は無いのと同じ。
その感覚が、当たり前のように顔に出ていたんです。
眠る長男の後頭部を見ながら、私は静かに悟りました。
この人は、自分の都合の外にあるものが見えない人なのだと。子どもの痛みも、そのなかに入っていなかったんです。
もし次に、笑って隠せないほどの何かが起きたら。頭を打った子が、あとになって具合を崩したら。そのときこの人は、きっと気づけない。そう思うと、体の震えが止まりませんでした。
子どもを任せて出かける日が、これほど怖いものになるとは思いませんでした。あの後頭部の怪我を、私は生涯忘れないと思います。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














