「早期教育のおかげね」と英才教育マウントをとるママ友。だが、久しぶりに再開したママ友が落ち込んでいたワケ
誰よりも先に走り続けた人
PTAの役員を一緒にやったママ友は、子育てでいつも先頭を走りたがる人だった。
幼稚園ではスイミング、小学校に入るとすぐ英会話に塾。周りの家庭がまだ様子を見ている時期に、彼女だけがどんどん先へ進んでいった。
会うたびに、習い事の成果を聞かされた。
中学に上がる頃には、自慢にも熱がこもっていた。
「うちの子、中1で英検3級まで取ったの。早期教育のおかげね」
「そうなんだ、早いね」
「早く始めたのよ」
「お宅も急がないと、差は開く一方よ」
うちの娘はマイペースで、習い事も本人がやりたがった時に始める程度。
比べられるたび、私の胸には小さなしこりが残った。
顔を合わせるたびに進度を測られ、急かされる。その繰り返しに、私はいつしか彼女と会うのが少し憂うつになっていた。
それでも、娘を無理に走らせる気にはなれなかった。
本人がやりたいと言うまで待とう、と夫とも話していた。
その方針が正しかったのかは、当時の私には分からなかった。
ただ、娘は自分の歩幅を崩さなかった。
高校で英語が好きになり、自分から勉強して英検2級を取った。
誰に急かされたわけでもない。
十年越しに分かれた道
子どもたちがそれぞれ社会に出てから、私はあのママ友と久しぶりに再会した。
彼女は昔のままの口調で、わが子の近況を尋ねてきた。
「お宅のお嬢さん、結局どうなったの?」
「今は就職して頑張ってますよ」
そう答えると、彼女の表情がわずかにこわばった。次の言葉を、探しているようだった。
「そう……。うちはね、あの子、途中から軽音楽にはまっちゃって」
声のトーンが、ゆっくり落ちていく。
「結局、進学もせずに就職したのよ。あれだけ早くから手をかけたのにね」
その場にいた何人かのお母さんが、静かに視線を交わした。誰も口は挟まない。
けれど、長年のマウントがその瞬間に空回りしたことは、その場の全員に伝わっていた。
かつて私を見下していた人が、今は言葉を濁してうつむいている。立場が、静かに入れ替わっていた。
「早く始めたから伸びる、ってわけでもないんですね」
私がそう言うと、彼女は何も返せず、曖昧にうなずくだけだった。
早期教育に振り回された日々を思い返しても、もう悔しさはなかった。子どもが自分で好きになったものこそ、いちばん遠くまで伸びる。そう確信できた再会だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














