「だって、早くもう一回滑りたかったの」何度も列の途中に入っていた女の子。だが、父親が初めて気づいた瞬間
何度も列の途中に入ってくる女の子
休日の午後、息子を連れて近所の公園へ出かけたときのことです。
滑り台には五、六人ほどの子どもが並んでいました。息子も最後尾に並び、少しずつ順番が進むのを待っていました。
ところが、五、六歳くらいの女の子が、滑り終わるたびに列の途中へ入ってきます。
どうやら滑り台がよほど楽しいようで、下まで滑るとすぐ階段へ走って戻り、空いているところを見つけて入ってしまうのです。
周囲の子どもたちは戸惑った様子でしたが、相手も小さな子なので、保護者たちも強くは言えません。
女の子の父親らしき男性は、少し離れたベンチに座って本を読んでいました。
ときどき娘のいる方向を確認しているようでしたが、列の細かな様子までは見えていないようです。
おそらく「もう一人で遊べる年齢だから」と思い、少し離れて見守っていたのでしょう。
私も、最初のうちはそのまま様子を見ていました。
しかし、女の子が再び列へ入り、今度は息子の前へ進もうとして、背中に軽く手をかけました。
そこで私は、できるだけ穏やかに声をかけました。
「みんな順番に待ってるから、次は後ろから並ぼうね」
女の子は一瞬きょとんとしたあと、滑り台と列を見比べました。
「早くもう一回滑りたかったの」
すると女の子は、そのままベンチにいる父親のところへ走っていきました。
「お父さん、後ろに並ぶんだって」
その声で、男性は本から顔を上げました。
「え?」
女の子は少し不満そうに続けます。
「だって、早くもう一回滑りたかったの」
男性はそこで初めて滑り台の列を見ました。
そして、何人もの子どもが順番を待っていることに気づいたようでした。
本を閉じると、娘と一緒にこちらへ歩いてきました。
「そうだったのか。お父さん、ちゃんと見てなくてごめんな。滑りたいなら、ここから並ぼう」
男性はそう言って、女の子を列の最後尾へ連れていきました。
そして今度はベンチへ戻らず、その場で娘と一緒に待ちます。
「前に何人いる?」
父親に聞かれると、女の子は指を折りながら一人ずつ数え始めました。
少し前まで何度も途中から入っていたのが嘘のように、自分の番が来るまできちんと待っています。
女の子には、誰かの順番を邪魔しようという気持ちはなかったのでしょう。
ただ、楽しくて早くもう一度滑りたい。その気持ちのまま動いていただけだったのだと思います。
だからこそ、大人がそばでルールを伝えることは大切なのだと感じました。
父親も、娘が一人で遊べると思って少し距離を取っていただけだったのかもしれません。
その後、父娘が一緒に列に並ぶ姿を見ながら、ほんの一言で公園の空気がずいぶん穏やかになるものだと思った出来事です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














